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〔焦点〕変わる生保の運用計画、2013年度 低金利続けば外債投資を静かに拡大

 <国内低金利続けば外債投資を拡大>

 
 国内最大手、日本生命の3月末の一般勘定資産は52兆4400億円。そのうち、1)一般貸付、2)国内債券、3)ヘッジ外債の3本柱を「円金利資産」と位置付け、ポートフォリオの7割を配分している。国内金利の低下で運用環境はこれまでになく厳しいが、「安定収益を確保するため、短期的な(相場の)変動をとらえて配分を大幅に動かすことは、現時点ではない」(大関洋・財務企画部長)という。

 
 ただ、あくまで「現時点」だ。低金利が継続した場合は、超長期国債への投資を抑え、ヘッジ外債などへの投資を検討するという。前年度はヘッジ付き外債は2600億円増やしたが、オープン外債は4200億円減らした。今年度の資金純増額は1兆円の予定で、前年度の資産残高比率を当てはめれば、ヘッジ外債は1300億円、オープン外債は400億円増えることになる。「チャンスがあればオープン外債も買っていきたいが、今の(為替)水準ではコーシャス(慎重)に構え、押し目をみてやっていきたい」と大関氏は話す。


 明治安田生命は前年度、外債を7900億円増やしたが、全体も2兆1350億円増えており、比率は37%。今年度の増加資産は1兆円強の見通しで、このうち半分弱を外債投資に充てるとしており、増加資産に占める比率は上昇する。「しばらく前と比べれば、今の海外金利と為替はどんどん買っていこうという水準ではない」(山下敏彦常務執行役)とするが、同社のドル/円予想は85─105円、米10年金利は1.5─2.5%と、現水準に比べ、円高・米金利上昇の方向に振れる局面も予想している。


 財務省発表の対外中長期債投資(指定報告機関ベース)は6週連続の資金流入超となっており、国内勢の外債投資が増加したデータはまだない。だが、生保系のあるエコノミストは「現時点ではポートフォリオ・リバランスに表向き慎重な姿勢を示す生保が多いが、国内低金利による運用難は本当に厳しい。株式はリスクウエートが高く増やしにくい。外債を増やすしかないだろう。マーケット・インパクトが出ないように静かに進めるのではないか」と話す。オープン外債を増加させる前に、すでに保有する分のヘッジを外すケースも多くなりそうだという。


 <ヘッジ比率低下させる生保も>


 外債投資は為替リスクをとらないヘッジ付きが中心という生保は依然多い。実際、海外の金利低下で内外金利差が縮小してきており、為替ヘッジコストは低下している。米国の10年債金利は約1.7%と高くはないが、現在の日米短期金利差はほぼゼロなので為替ヘッジコストはほとんどかからない。日本の10年債利回りは約0.6%であり、米国債投資はそれなりに魅力がある。ユーロの短期金利もゼロ近辺だ。大同生命は、外債投資は増やすが、基本的に為替ヘッジ付きで取り組むという。


 しかし、豪ドルは約3%、南アフリカランドは約5%、ブラジルレアルは約7%の短期金利があり、高利回りを求めようとすれば、為替ヘッジコストはそれなりにかかる。長期的な円高局面が終了したとの見方からヘッジ比率を落としたり、オープン外債を増やす姿勢をみせる生保も増えてきた。


 朝日生命は従来、すべてヘッジするのが基本だったが、12年度下半期の外債積み増しにより、ヘッジ比率が9割強まで低下した。資産運用統括部門・ゼネラルマネージャーの小野貴裕氏は今年度の外債運用計画について「さらなる円安が見込まれると判断すればヘッジ比率の引き下げを検討する」と語る。住友生命も、円高リスクは後退しており、オープン外債で為替リスクを一部鳥うとしている。


 オープン外債が増えれば、為替市場へのインパクトも強まる。生保協会によると、2011年度末時点の生保が保有する有価証券は257兆5603億円。仮に1%、オープン外債投資を増やすだけで年間約2.5兆円のマネーがシフトすることになる。1日数十兆円のマネーが動く外為市場だが、「日計りのトレーダーではない売り切り・買い切りの主体が動けば市場への影響は大きい」(邦銀)。


 <国内株の慎重姿勢変わらず>

 
 一方、国内株への投資には慎重な姿勢に変化はみられない。今年2月末時点で国内生保(かんぽ生命含む43社合計)の株式残高は12兆5441億円。運用資産324兆円のうち3.8%にまで低下しているが、今年度も横ばいもしくは減少の運用計画がほとんどだ。


 2011年度決算からソルベンシー・マージン比率算出式の厳格化が図られ、国内株式のリスクウエートが10%から20%に引き上げられたことも敬遠される理由となっている。三井生命の杉本整・運用統括部長は「2013年度も日本株への投資を増やすことはない。株式相場の上昇で時価ベースでは増えることも考えられるが、簿価ベースでは減らしていく方向だ。今の会計制度の中で将来の株価変動を考えると、ある程度リスク性資産への割合を固定化せざるを得ない」と話す。