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歌舞伎座新開場 �達葺落五月大歌舞伎 - 転妻よしこ の 道楽日記

次の『寺子屋』では、私はこの演目としてはほぼ初めて、
役者の位取りと役の軽重のバランスがぴたりと合った芝居を
見せて貰えたような気がした。
これまで誰が演っても、私には、武部源蔵だけが主役に見えて、
松王丸は苦悩が目立つだけの「重めな脇役」としか
感じられないことが多かったのだが、
今回の、三津五郎の源蔵×幸四郎の松王丸、という組み合わせは
私にとって、目からウロコが落ちるような素晴らしさだった。
幸四郎を心から「良い!」と感じたのも、多分、初めてだった(殴)。


源蔵役者は巧ければいいというものではないし、
自分だけ光って見えるようでは、きっとこの役としてダメなのだ。
三津五郎がしてみせたように、松王丸が出ていない場面でも、
彼との関係性の中に、源蔵の的確な位置というものがあるのだ。
一方の松王丸は、源蔵に較べて動きのない役なのだが、
実は内面に秘めているものの深さ複雑さは源蔵の比ではないので、
何もしていないときでも、常に松王丸は大きくなくてはならない。
この二人のバランスが、この芝居の要なのだ。
……という感じ方が正しいのかどうかわからないが、
少なくとも私の見たかった『寺子屋』はそういうものだった、
ということが、今回の公演を観て初めてわかった。
幸四郎の底力には、畏れ入った。

そして、当初の配役では和尚吉三には團十郎が出る筈だった。
それが叶わぬこととなり、幸四郎が代演していた。
なつおちゃんより線が細くて、色っぽい和尚吉三だったかもしれない。
『夏雄君の代わりに彼を偲んで務めます』
という幸四郎の言葉が筋書きに出ていて、胸が熱くなった。

一等席では、松たか子さん御夫妻が御観劇、
終演後のロビーでは、富司純子さん・菊之助夫人の瓔子さんが
和服姿で挨拶に立たれているのをお見かけした。