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緩和ポジション巻き戻しでリスクオン逆回転、世界同時株安に | Reuters

株価急落のきっかけは5月22日のバーナンキ米連邦準備理事会(FRB)議長の議会証言だ。同議長は「状況改善の継続を確認し、持続可能と確信できれば、今後数回の会合で資産買い入れを縮小することは可能だ」と発言。マーケットのQE3早期縮小観測が急速に強まった。「経済動向を見極め、買い入れを拡大することも縮小することも可能にしていく」とし、追加緩和・緩和縮小、両にらみのスタンスを示したが、米景気が改善する中で、投資家は「出口」をにらみ始めている。


「日本だけでなく新興国から資金が流出しているのは、QE3の早期縮小観測をきっかけに、投資家がこれまで積み上げてきたリスクオン・ポジションを巻き戻す動きを強めているためだ。QE3が終了すればQE4はないとみられていることから、QE1から始まった超金融緩和環境のターニングポイントが到来するのではないかと投資家が神経質になっている」と三菱UFJモルガン・スタンレー証券・投資情報部長の藤戸則弘氏は指摘する。

本来なら、米「出口」観測はドル高・円安要因であるため、流動性縮小懸念による株安が起きても円安が日本株を下支えるはずだった。しかし、リスクオン・ポジションの回収による円高と円キャリートレードの巻き戻しが予想以上に強く出ているもようであり、目論見ははずれている。


キャリートレードにとってボラティリティの低さは絶対条件だ。調達金利が低い通貨を借りて、高金利通貨などに投資するキャリートレードは、投資先の収益が安定していたとしても、為替のボラが上昇すれば為替差損が発生し、パフォーマンスが低下する可能性を高める。さらに投資家にとっては、リターンそのものだけでなく、リターンのバラつきもパフォーマンスを左右するため、ボラの上昇はキャリートレードを解消し、リスクオン・ポジションを巻き戻す要因となる。

昨年までマーケットを揺るがしてきた欧州債務問題は、いったん落ち着いている。米国や日本の経済は比較的堅調で、アジアも中国経済に不安はあるものの、全体的には成長トレンドを続けている。米国の「出口」観測が強まっているのも、米経済が着実に回復しつつあるためだ。1997─98年当時と比べ、アジア各国は豊富な外貨準備を保有しており、通貨危機が起きる可能性は大きくない。リスクオフが進む環境ではないため、キャリー巻き戻しなどポジション調整が一巡すれば、ドル高/円安基調に戻るとの見方も多い。


市場では「今の株価や為替などの市場の動揺は、現段階では単に行き過ぎた期待の修正にとどまっており、実需の部分の改善トレンドは変わっていない」メリルリンチ日本証券チーフクレジットストラテジストの上田祐介氏)と、冷静な声も出ている。日経平均は急落したが、前場東証1部売買代金は1兆3201億円と引き続き薄商いであり、パニック的な投げ売りが強まっているわけではない。


ただ、世界経済は回復しているとはいえ、そのスピードは緩やか。それゆえ、金融緩和の併存を許してきたといえる。株高による資産効果が少なからず景気を押し上げており、株安が一段と進行すれば、自己実現的に経済を冷え込ますおそれがあるため警戒が必要だ。「超」が付くほどの金融緩和による流動性相場をおう歌してきたマーケットだけに、その反動も大きい。