- 作者: 池波正太郎
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2011/06/01
- メディア: Kindle版
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藤沢周平にはまりまくって、読み漁った後、さあ次何の時代小説を読もうかなと思ったときに本屋でずらっと並んだ黄色い表紙が目に留まり、試しに一巻目を買ってもうノックアウト。最初、主人公がじいさんなんて嫌だ〜と思った私が馬鹿だった。次の日から、数日おきにまとめて数冊ずつ買いました。通勤電車の行き帰りで一話ずつ、ちょうどいい長さ。秋山小兵衛と彼をめぐる人々がなんとも人間臭く魅力的で、気分爽快。番外編含めて全部読み終わった後、83歳の祖父に貸してあげたら、大喜びしてました。「毎晩布団の中で一話ずつ読んでるよ」と言ってました。結局祖父もすぐに全巻読み終わって、今は知り合いの間をぐるぐると回っています。読んだ人皆喜んでます。私は鬼平よりお気に入りです。
「剣客商売」が他の時代小説と一線を画しているのは時代小説だけではなく、すべてのエンターテイメント小説の中でも屈指のシリーズであるところ。秋山親子の剣の冴えも読みどころのひとつだが、それは、味付けのひとつでしかない。秋山小兵衛を中心とした人のつながり、移り変わる季節の描写と人間模様が(多くの優れた時代小説がそうであるように)更にこの連作を奥深いものとしている。
基本的には一話読みきりなので、まずはこの第一巻を手にとって見てください。数日後には全巻そろえることになるでしょう。
「剣客商売」は池波氏の代表作の一つで、初版発刊以来数十年を経ていますが、愛蔵版、文庫版など数々の形態で版を重ねて今なお、圧倒的な人気を誇ってる日本を代表する作品です。
主人公の秋山小兵衛は60歳を超えた小柄な老人ながら無外流の剣の達人で、息子の大治郎と共に並みいる剣客や悪人を次々となぎ倒して江戸で起こる様々な事件を鮮やかに解決していきます。しかし単純な勧善懲悪的な話ではなく、善悪の狭間を自在に泳ぎきる小兵衛の姿はストーリーに奥行きや含みを持たせています。
そして鬼の形相で悪人を一刀両断にしながらも、その一方で愛弟子や市井の人々に見せる情と慈愛に溢れる主人公は何ともいえない魅力を持っています。
物語は基本的に一話完結の短編という形に収められていますが、時系列に描かれる話の中で、登場人物たちは少しずつ成長していきます。
剣にしか興味のなかった大治郎はいつしか黒白に割切ない人間の様々な面を理解するようになり、やがて良縁にも恵まれて子を持つまでに至ります。そして小兵衛の方は昔日共に腕を磨いた剣友と死別し、悪事に手を染めたかつての愛弟子を自らの手で成敗するなどして、次第に老境に差掛かった自分を感じ始めます。その最後の姿を掲載した「浮沈」は老境を迎えた小兵衛の姿が万感の思いを込めて見事に描かれています。