新書ブーム余波 教養書の仕切り直し? 「選書」相次ぐ創刊 岩波も - MSN産経ニュース
各社の選書は、人文・社会科学を中心に幅広い分野のラインアップをそろえる。判型は大半が四六(しろく)判(縦約19センチ)に近いサイズで、社ごとに統一されたソフトカバー装丁が多い。
中公選書の横手拓治編集長(53)は「長編教養書としての選書を出せる出版社はある程度限られる」と語る。新書に比べて専門的な内容を多岐にわたって展開する選書は、出版社の蓄積や人脈が試される。いきおい、各社の得意分野が濃厚に反映されることになる。「各社の特徴が最もよく出るのが選書かもしれない」
旧来の新書は、実績のある学者らが専門知識を一般読者に分かりやすく伝える教養・啓蒙(けいもう)書の色合いが強かった。だが21世紀に入って以降、創刊ラッシュが続き、“新書戦争”と呼ばれるほどの混沌(こんとん)とした状況になっている。粗製乱造が指摘され、かつての教養書の枠組みは完全に崩れていると馬場編集長はみる。
「新書はもはや作り手にとって何でもありの状態になり、飽和状態。一方で学術単行本も、近年ますます学界の中だけにしか届かない本になってしまっている。内容でも価格でも両者の距離が広がる今、その間を埋める器が必要だ」
手軽な雑学本と、難解な学術本の間。近年、選書創刊が相次いでいるのは、新書戦争で崩壊した教養書の仕切り直しという面があるのかもしれない。