「母は小さい頃クラシックバレエに憧れたようで、自分が習えなかったかわりに私に習わせてくれました。でも歌やお芝居は音楽学校に入ってから勉強しましたので、いつでもどんなときでも、まだできない、もっとお稽古しなければ、と。人一倍時間をかけて努力しなければという気持ちで今までずっとやってきました」
苦手意識がぬぐえなかった歌。稽古が始まった頃はまだ、毎回、ドキドキしながら歌っていた。すると春野寿美礼から、「発声やポジションはもう体に染み付いているのだから、いったん忘れて、気持ちで歌ったほうがいいよ」とアドバイスをもらった。
「それからやっと、楽しいなと思いながら歌えるようになりました」
舞台に対する情熱や取り組み方など、教えてもらったことはすごーくいっぱいある。背中ばかり見ていたときより、ご一緒させていただくようになって、こんなに深いところまでいろんなことを考えていらっしゃるんだ、ということがわかりました。
どんなときでも素直であることが大切なので、忘れずに気をつけていきたいですね
いつもノートを持ち歩いている。役作りのために公演ごとに1冊を使うそうで、見せてもらうと小さめのきちょうめんな字で、ほとんどのページがびっしりと埋まっていた。
「まずは演目の年代に何が起きたか、あった出来事などを年表風に書いていきます。それから役の人物が生まれた環境、子供のころに何をして、どういうふうに育ってきたのか、を想像して書いていきます。いろんな想いがどんどんわいてきて、書ききれなくなりますね」
この作業も春野から教わり、「ファントム」公演のときから続けている。「春野さんは演じる役柄を、ご自分の人生のように語られるんですよ。やっていくと楽しいですね。公演中も読み返して、そうだった、こうだったと、思い出す記憶みたいなものがあるんです」