数々の試練越えてきた老舗企業、アベノミクスで埋もれる懸念 - Bloomberg
愛知県に本社を置く工業用ばねメーカー、東郷製作所の相羽繋生社長は新しい成長の種がどこにあるのか、どのようにすればこれから会社を存続させていけるのか頭を悩ませている。
同社は150年余り前にルーツがある老舗企業だ。農機具の修理業から始まった同社は関東大震災や第2次世界大戦での敗戦、台風被害、1980年代の資産バブル崩壊 と数々の逆風を乗り越え、現在はアベノミクスの真っただ中で生き残りに懸命だ。
相羽社長(58)は愛知県内の同社工場でのインタビューで、「何もしなくても定昇という形で給料は上がっていく。そうするとそれだけ固定費が上がっていく。今アベノミクスで言われているように、インフレになると世の中何でも費用は上がる形になる」とし、「何か新しい飯の種を見つけなければ埋もれていく」と話した。
安倍晋三政権は財政・金融の刺激策を強化し、賃上げと投資を促すことで15年に及ぶデフレからの脱却を図っている。東郷製作所はそのあおりを受けている企業の一つだ。同社最大の顧客であるトヨタ自動車 は円安の恩恵を受けているが、東郷製作所のような中堅企業や日本の労働者の約66%が働いている中小企業は苦戦している。
アベノミクスにより日本株 は5年ぶりの高値に達し、円安効果でトヨタの利益は押し上げられた。円安の恩恵にすぐにあずかることができず、賃金上昇や原材料コストといった負担に直面する東郷製作所のような中堅以下の企業に対して政府がより注意を払う必要があると相羽社長は訴える。
ブルームバーグが集計した2000年以降の財務省データによれば、資本金10億円以上の日本企業は今年4−6月期に過去最高の計10兆5000億円の利益を計上した。これは資本金1000万−10億円未満の企業の利益の2倍余り。両者の差がこれほどまでに膨らんだのは初めてだ。