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【日の蔭りの中で】京都大学教授・佐伯啓思 安倍政権この1年と今後 - MSN産経ニュース

確かに経済は復調しつつあるようにみえ、それはそれで結構なことなのだが、この十数年、日本経済を低迷に陥れた状況そのものはほとんど変わっていない。また日本経済を取り巻く不安定要因も決して減じているわけではない。少子高齢化や人口減少からくる需要の低迷、グローバル化のもたらす過度なまでの競争圧力、各国による過剰な流動性供給による金融市場の不安定化、中国経済の先ゆき懸念、先進国の財政問題など、不安定要因を列挙すればきりはないのである。


 今日の日本経済はいわば成熟経済であり、これから先、長期的にみてさして成長が見込まれるわけではないし、また無理に成長する必要もない。医療分野や教育分野など、成長戦略に名指しされている分野は、本来は「成長産業」などとは無縁の「公共的領域」なのである。


 その一事からもわかるように、今日、真に必要なのは公共的領域の充実であって、高齢社会化、自然災害、地方の疲弊などに対処する公共的なインフラストラクチャーの整備こそが急務であろう。


 こういう社会は過度なまでの競争社会ではなく、むしろ共生社会でなければならない。せっかく景気が上昇しムードがよくなったいまこの時期にこそ、将来へ向けた新たな経済社会像を提示することが政治の責務というべきである。