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銃弾提供を決定 政府「例外措置」と説明 NHKニュース

南スーダンでは、今月15日以降、首都ジュバで、キール大統領を支持する軍の部隊と、マシャール前副大統領を支持する部隊との戦闘が続き、東部のジョングレイ州では国連の施設が襲撃され、PKO部隊のインド軍兵士など少なくとも10数人が死亡するなど、緊張が高まっています。
こうしたなか、ジョングレイ州でPKO活動に参加している韓国軍から、日本政府と国連に対し、部隊と避難民の防護に備え、弾薬が不足していることから、PKOに参加している陸上自衛隊が所有する小銃用の5.56ミリ弾を提供してほしいという要請がありました。
これを受けて23日、安倍総理大臣や小野寺防衛大臣ら、国家安全保障会議の関係閣僚が総理大臣公邸で対応を協議しました。
その結果、PKO部隊の中で同じ型の銃弾を保有しているのは陸上自衛隊だけであること、提供しなければ避難民の防護などに支障が出ることなどから、PKO協力法に基づき、自衛隊が所有する銃弾1万発を国連を通じて韓国軍に提供する方針を決め、23日午後、持ち回りの閣議で正式に決定しました。
PKO協力法に基づいて、国連に武器が提供されるのは初めてです。
政府は23日中に提供したいとしています。

政府は過去に国会で、PKO活動での物資協力に関連して、国連への武器や弾薬の提供は「含めない」という見解を示し、「国連側からそういった要請があると想定しておらず、仮にあったとしても断る」などと答弁しています。
政府は、今回の措置について「一刻を争う緊急事態であり、緊急性と人道性が極めて高いことから、提供することを判断した」と説明しており、併せて武器の輸出を原則として禁じてきた、いわゆる武器輸出三原則の例外措置として実施したなどとする、菅官房長官の談話を発表することにしています。
小野寺防衛大臣はNHKの取材に対し、「『弾薬』の提供ということで、これまでの想定を超える内容なのは事実だ。現地の状況と人道的な問題、そして緊急性を考え合わせ、国家安全保障会議で方向性を出し、法的な問題を整理して対応した」と述べました。
そのうえで小野寺大臣は、「弾薬の提供によって、自衛隊の弾薬が不足するような状況ではない。現在自衛隊が活動している首都のジュバは、北部の地方都市のような状況には至っていないが、現地との情報交換をしながら、安全について細心の注意を払いたい」と述べました。

南スーダンで国連のPKO=平和維持活動を行っている韓国軍が日本側におよそ1万発の銃弾の提供を求めたことについて、韓国政府は、大統領を支持する部隊と、前大統領を支持する部隊の戦闘が、駐屯する地域に迫り、非常事態に備える必要があるためだとしています。
韓国軍は、ことし3月から特殊部隊70人を含むおよそ280人が、東部ジョングレイ州の州都ボルでPKO活動に参加していて、主に道路の補修や医療活動など市民生活の支援を行っています。
韓国国防省によりますと、南スーダンの大統領を支持する部隊と、前副大統領を支持する部隊の戦闘がボルに迫ってきているため、韓国軍の部隊は駐屯地の外での活動を控え、警備を強化しているということです。
さらに非常事態に備えるため、銃弾を補充することを決め、国連に相談したところ、陸上自衛隊が所有しているという知らせがあり、1万発の銃弾の提供を求めることにしたとしています。
南スーダンの状況について、キム・グァンジン国防相は国会で、「現時点で駐屯地周辺の状況に異常はない」としながらも、「最悪の場合には当然、部隊の撤収はありうる」と述べて、引き続き警戒を続ける考えを示しました。

南スーダンが北部のスーダンから分離独立した2011年から、現地には国連のPKO=平和維持活動の一環として、UNMISS=国連南スーダン派遣団が展開しています。
UNMISSには現在、日本を含むおよそ60か国が参加しており、兵士や警察官7600人に加え、文民の要員やボランティア2500人が国内各地で活動しています。
南スーダンでは独立後も、北部の油田地帯の領有権などを巡って、スーダン側との間で武力衝突が起きてきたほか、東部でも異なる民族どうしの対立が続いており、UNMISSは治安の維持とともに、経済発展に向けた環境整備に当たってきました。
UNMISSでは、これまで19人の要員が戦闘に巻き込まれるなどして死亡しています。
陸上自衛隊の施設部隊が派遣されている首都ジュバの近郊では、これまで比較的治安は安定していたものの、経済発展に欠かせない道路などのインフラの整備が大幅に立ち遅れ、自衛隊も活動範囲を拡大して支援に当たるよう要請を受けていました。

南スーダン情勢の緊張を受けて、国連は22日、現地でPKO=平和維持活動に当たっている要員を再配置する方針を明らかにしました。
国連は安全上の理由から、首都ジュバにいたPKOの要員の一部を隣国ウガンダに退避させ始めたほか、戦闘が激しくなっている東部ジョングレイ州の施設から文民の要員を首都ジュバに避難させたとしています。
一方で、各地のPKOの施設には今も合わせて2万人の住民が避難しているということで、国連ではジョングレイ州を中心に兵力を増強して市民の保護に当たる方針です。
国連のジョンソン代表は「われわれは南スーダンを決して見捨てない」と述べ、PKOの要員を再配置しながら、市民の保護に全力を挙げる姿勢を強調しました。

PKO協力法の「物資協力」に基づく国連への物資の提供は、これまでにも行われていますが、武器弾薬の提供は今回が初めてです。
政府はこれまでのPKOで、国連に対し毛布やテント、それに自衛隊が使用したコンテナなどを提供してきました。
しかし、憲法の平和主義に基づき、原則として海外への武器輸出を禁じた武器輸出三原則との関係から、武器や弾薬を提供したことはありません。
また、自衛隊イラク派遣の根拠となった「イラク支援法」や、インド洋での給油活動の根拠となった「テロ対策特別法」では、提供する物資の中から武器弾薬は除外されています。
政府が、今回、提供の根拠としているPKO協力法の「物資協力」について、政府はこれまでの国会で、「武器や弾薬は含まれず、国連から要請があっても断る」と答弁しています。
これについて、内閣府の担当者は、「当時の答弁は基本的な考え方を述べたものであり、緊急時の例外的な武器弾薬の提供を排除したものではない」と説明しています。
憲法が専門で、学習院大学大学院教授の青井未帆さんは、「南スーダンの状況は客観的に悪化していると言えるので、緊急性があるという判断には一定の理由がある」と話しています。
そのうえで、「今回の提供が、過去の政府答弁と整合性が取れていないことも否定できない。緊急性があるとしても、政府が何をしてもいいということにはならず、武器輸出三原則がなし崩しになるおそれもある」と指摘しています。