川崎市多摩区の無職、杉本裕太容疑者(20)は、別の男と共に女性を乱暴し、現金を奪ったなどとして、今月6日に警察に逮捕されましたが、送検された翌7日、川崎市の横浜地方検察庁川崎支部の取調室から逃走し、2日たった9日、およそ20キロ離れた横浜市内の雑木林で見つかり、逮捕されました。
警察はこの間、延べ1万人を超える態勢で行方を捜査し、地元の小中学校では子どもたちを集団で登下校させるなど、地域に大きな不安が広がりました。
杉本容疑者について、横浜地検は、身柄を勾留する手続きが終わる前に逃走していたことから逃走罪は適用できないとして、女性への乱暴に関わった罪や強盗などの罪だけで起訴する方針です。
逃走罪は、勾留中の容疑者や被告、それに服役中の受刑者が逃げた場合に適用されますが、検察庁などによりますと、今回のようなケースでは逃走行為自体を罪に問うことはできないということです。
元東京高検検事の高井康行弁護士は、「勾留請求する前の段階で逃げてしまうと、いくら逮捕中の人であっても逃走罪には当たらない。しかし、逃げたこと自体は罪に問えなくても、当然情状は悪くなり、判決にも影響が出て、いわゆる『逃げ得』にはならない。今回は、容疑者が逃げたことで近隣の人たちが非常に不安を感じており、悪い情状として法廷で明らかにされるべきで、当然、求刑や量刑にも反映されると思う」と話しています。
(逃走)
第九十七条 裁判の執行により拘禁された既決又は未決の者が逃走したときは、一年以下の懲役に処する。
拘禁された未決の者とは、勾留状の執行のために拘禁されている者をいう(札幌高判昭和28年7月9日高刑集6巻7号874頁)。また、刑事訴訟法167条及び224条による、鑑定留置に付された者も含まれるというのが通説的見解である(仙台高判昭和33年9月24日高刑集11巻追録1頁参照)。一方、逮捕状の執行のために拘禁されている者は、「裁判の執行により」拘禁された者ではないから、加重逃走罪の「勾引状の執行を受けた者」にはあたるが、単純逃走罪の主体とはならないとするのが通説的見解である(東京高判昭和33年7月19日高刑集11巻6号347頁参照)。