【黒川信雄のロシア極東・北極圏を読み解く】「国境を固めろ」 プーチン大号令の意味は? - MSN産経ニュース
北極が資源基地、通商ルートとして世界的注目を集めるなか、北極圏に世界最大の領土を持つロシアが同地域と、それに連なる極東の国境警備を進めている。
北極開発はロシアにとりチャンスである一方、氷の融解により各国の船籍がより自由に航行できる環境は、ロシアの安全保障にとり脅威になるためだ。
「国境の保全システムの改善に対し真剣な注意が払われなければならない。鍵となるのは北極圏の国境と、カフカス地方、極東の国境インフラの改善だ」
プーチン大統領は昨年12月20日、モスクワで行われた保安機関職員向けの会合で、カフカス地方と、北極、極東を並べて“真剣な注意”を払うよう、国境警備などに携わる保安機関職員らに檄を飛ばした。
プーチン氏はすでに、北極圏の国境警備体制の強化に手をつけている。12月10日に行われた国防省拡大幹部会では、北極海のフランツ・ヨシフ諸島とノボシビルスク諸島に新たに空軍基地を設立する計画が披露され、プーチン氏はここでも「ノボシビルスク地方における基地を再開させたが、それは北極圏全域における状況をコントロールする上で極めて重要な意味を持つ」と言明した。
プーチン氏と歩調を合わせるかのように、同氏の側近とされるパトルシェフ安全保障会議書記も12月27日の政府系紙「ロシア新聞」でのインタビューで、ロシアにとっての北極の意義を以下のように語った。
「北極圏は、ロシアと他国との関係における、国際、軍事、エネルギー、情報通信の安全保障で、より重要な地位を占めつつある。ここには、ロシアの国家的な輸送手段がしかれている。つまりそれは、北極海航路だ」
北極海では今、温暖化に伴う氷の融解により船舶の航行が容易になりつつあり、北極海を経由して既存の航路より短時間でアジアと欧州をつなぐ「北極海航路」に注目が集まっている。ロシアにとり、自国の領海を船舶が多く行き来する状況は、航路周辺の基地での商業の活性化や、万が一船舶が氷に閉じ込められないよう、護衛サービスを提供できるメリットがある。
ただ同海域の氷が溶けることは、その海域を各国の海軍の艦船が容易に航行できることも意味する。国際法で非軍事化が定められた南極と異なり、北極海はその多くの海域で軍事演習などを各国が行うことが可能で、各国の軍事プレゼンスが高まることはロシアにとり懸念すべき状況だ。北極海の氷の溶解により、「21世紀の冷戦」(英紙ガーディアン)が引き起こされるなどの懸念が高まるゆえんだ。
さらに今回、北極圏、極東の国境警備強化が合わせて打ち出された背景には「中国への意識がある」(日本の防衛専門家)との指摘もある。
中国は、北方海域での存在感を高めている。2012年には砕氷船を北極探査に送り込み、北極点近くの航路を使った航行に成功した。13年には初めて、北極海航路へのアジア側の通過海域になりうるオホーツク海に中国艦艇が進出した。ロシアは中国砕氷船の北極進出、また中国艦艇のオホーツク海進出に合わせ関連海域で軍事演習を実施するなど、中国を意識したともとれる反応を示している。
国境への脅威としては、人口減少に悩む極東地域での中国の不法移民の流入もロシア国内で懸念が高まっている。ハバロフスクのネットメディアによると、ハバロフスク地方では12年だけで、「ロシア連邦保安局(FSB)が千人以上の違法な中国人移民の合法化の流れを止めた」という。
http://d.hatena.ne.jp/d1021/20140215#1392460856
http://d.hatena.ne.jp/d1021/20140207#1391771369
http://d.hatena.ne.jp/d1021/20131211#1386758740
http://d.hatena.ne.jp/d1021/20130511#1368276744