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コラム:格差への懸念に歴史的普遍性=サマーズ氏 | Reuters

米国ばかりかそれ以外の地域でも、経済格差が重要な問題として浮上してきている。


所得総額において最上位階層1%の所得が占める割合の上昇や、労働分配率における企業利益の比率の高まり、実質賃金の停滞、生産性の伸びと中所得世帯の所得増加率の格差が広がっていることなどすべてが、考慮に値する懸念要因だ。


10年前ならば、経済全体の成長率が中間層の所得の伸びや貧困率低下の進ちょく度合いを決定するという主張に妥当性があっただろうが、もはや今は違う。米国は「ダウントン・アビー」(英制作のテレビドラマで大邸宅に住む貴族と仕える多くの使用人が登場する)の経済に向かいつつある可能性が大きい。


だから不平等とそれに付随する現象を心配することには正当な意味がある。経済状況が正常化し、財政赤字に最終的に対応しても、そのずっと後まで富の再分配の不公平性が増していることに伴う問題は残っていくだろう。

オバマ大統領の格差に対する懸念を「富裕層の解体」や非米国的な大衆迎合主義と非難する人々は、控えめな言い方をしても狭い歴史的知見しか持ち合わせていないといえる。

歴代の大統領の発言例を考えてみよう。


フランクリン・D・ルーズベルトは1933年の就任演説で金融業界に言及し、「恥知らずの両替商たちは世論という法廷において弾劾される立場にある。彼らは利己主義者が生み出したルールしか知らない。彼らはビジョンを欠いており、ビジョンの無い人々は滅びゆく」と語った。


その後ルーズベルトは1936年の再選に向けた選挙戦では「われわれは平和に対する古くからの敵と苦闘してきた。それは企業や金融の独占、投機、向う見ずな銀行業だ。彼らは一致してわたしに敵対的であり、そうした敵意は望むところだ」としている。


ルーズベルトの後を継いだハリー・S・トルーマンは「ウォール街の反動主義者は金持ちであることに満足していない。これらの貪欲な共和党員の特権階級は、冷血な人間たちだ。彼らはウォール街の経済的な独裁体制の復活を望んでいる」と主張した。


さらにジョン・F・ケネディは1962年の鉄鋼価格値上げに失望して非公式の場で鉄鋼幹部らに罵声を浴びせたが、それはすぐに公表されて、連邦捜査局FBI)が関係企業に家宅捜索に入るとともに、企業や経営者個人の記録の召喚を求める事態につながった。


彼が内国歳入庁(IRS)に鉄鋼幹部の所得還付に関する監査を命令したのもうなずける。


リチャード・ニクソンも1973年、IRSに対して規制上限から1.5%を超える幅で値上げした企業に関する記録を徹底的に調べるよう命じている。


そしてビル・クリントンは1992年の選挙戦期間に「米国には新たな社会秩序が形成されつつあり、成功を求める人々にとって不公平さや格差、不可侵性が増している。米国の金持ちはさらに金持ちになるが、米国自体は富まなかった。株価は3倍になっても賃金は下がった」と不満を表明した。

所得格差や富の集中、金融業界内の利益がもたらす影響を懸念することが異例でも非米国的でもないことを証明する事例は、このほかにも枚挙に暇がない。