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アングル:財務省幹部が円安の輸出増効果を否定、日銀と微妙な温度差 | Reuters

財務省の山崎達雄国際局長が18日、円安が輸出を増やすことにはならないとの見解を表明し、一部の市場関係者の注目を集めている。


政府・日銀はこの1年間、「円高是正」を旗印に円安方向への為替変動を歓迎してきただけに、財務省のスタンス修正の背景を読もうという動きも市場に出てきた。これに対し、日銀は円安に関して新しいメッセージは発信しておらず、財務省との間に微妙な温度差も感じられる。

山崎国際局長は18日にソウルで開かれた会議の中で、日本の大手製造業の多くが生産を海外に移したため、円安は国内産業の競争力強化に直接にはつながらないと指摘。円安が日本の輸出量を拡大させるとの理論は、もはや当てはまらないと述べた。


具体的にには、日銀の積極的な金融緩和を受けて円が大幅に下落しても輸出量は増加せず、昨年の実質国内総生産(GDP)成長への輸出の寄与がマイナスだったと分析した。

一方、日銀は円安が輸出を伸ばすとの立場を崩していない。輸出の伸びが弱いのは東南アジア諸国連合ASEAN)など輸出先の経済減速が要因で、それでも円安により競争力が回復しつつあるという見解を取っている。日銀の黒田東彦総裁は18日の会見で「これまでに起こった為替相場の動きを背景に、輸出が緩やか増加していくと思われる」と述べた。

もっとも日銀も「製造業の現地生産シフトなど構造的要因もある程度影響がある」(黒田総裁、1月31日・衆院予算委員会での答弁)と認める。安倍晋三政権発足後の円安・ウォン高による韓国電機への影響が限定的であったため、日本メーカーの相対的なブランド力低下などを指摘する声も日銀内部にはあり、現状認識が財務省と大く違っているわけではなさそうだ。

であれば、なぜ財務省と日銀で発信内容が異なるのか──。ある市場関係者は1つの仮説を提示する。

日銀にとって円安を通じた株高が、重要な金融緩和の波及経路となっている。他方、金融機関や企業の資金余剰により、金利の低下を通じた本来的な金融緩和の波及経路が必ずしも十分には利いていない。国債買入れなどバランスシート拡大による円安、株高を通じた景気刺激がより重要になっている構図がある、とその市場関係者は説明する。


15年度に物価目標2%を達成するとの目標を掲げた日銀の景気・物価見通しが、民間予想よりも大幅に楽観的(14年度成長率が日銀1・4%、民間予想平均0.8%)なため、「輸出が伸びるロジックがなければ実現不可能」(民間エコノミスト)という指摘も出ている。

これに対し、財務省は対外的な為替政策の担当者として、円安誘導批判をかわし続ける必要がある。


米国のルー財務長官は1月に日本が「為替に過度に依存すれば長期的な成長はない」と円安をけん制。


今月18日には、20カ国・地域(G20)メンバーに宛てた書簡の中で日本経済について触れ、過去2年は主に内需に支えられてきたとしつつ、内需の見通しは不透明になったとの認識を表明した。一部の市場関係者からは、円安を通じた安易な輸出依存に警鐘を発したと受け止めれている。


こうしたルー長官の見解表明の背後には、米自動車業界などへの配慮が趣旨との見方もあるが「105円以上の円安は困るという意味」(国際金融筋)との説明も聞かれる。


財務省内には、急激な円安進行が日本の長期金利の急上昇につながりかねないとの懸念もある。できれば円安進行の継続を望んでいるとみられる安倍首相周辺や与党との間にはっきりとした食い違いが出てくれば、今後のマクロ政策運営にも影響が出てくる可能性がある。