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コラム:市場が織り込む「プーチン氏の勝利」=カレツキー氏 | Reuters

作家オスカー・ワイルドは、結婚を「経験に対する期待の勝利」だと表現した。対照的に、金融や地政学において、経験は常に期待に勝り、現実主義が希望的観測を打ち破る。


ウクライナにおけるロシアと欧米の対立は、この好例だと言える。この問題を非常に危険な状態にしているのは、米国と欧州連合(EU)の政策が、期待や希望的観測に基づいているように見えることだ。ロシアのプーチン大統領が分別を持つか、少なくともロシアの経済利益や側近の個人的資産への制裁を恐れて思いとどまるという期待。そして、「民主主義や自由」は必ずや独裁主義や軍事的威圧に打ち勝つという希望的観測だ。

ウクライナがロシアのクリミア半島併合を黙認せず、反撃に出るとすれば、軍事的手段や少数派ロシア系住民への圧力に訴えることになる。ただ、その場合、ユーゴスラビアのような内戦に突入することはほぼ不可避で、ポーランド北大西洋条約機構NATO)、そして米国も巻き込まれる可能性が高い。

歴史を通して、ロシアは地政学的な目標のために、西側からは想像を絶する経済的苦難を受け入れてきた。4日の金融市場では、プーチン氏がモスクワ株式市場の急落を受けて軍事行動を一時停止するとの見方が広がったが、控えめに言っても、そうした考えは認識が甘い。

プーチン氏は、欧米がクリミア占領を認めない場合、戦争しか選択肢がないという「既成事実」を作り出した。

現段階での唯一の疑問は、ウクライナ政府がクリミアを黙って手放すか、それとも新たな国境内でロシア系住民に報復しようとするかということだ。報復に出れば、プーチン氏にクリミア以外のウクライナ侵攻の口実を与え、全面的な内戦に突入するだろう。


これは投資家にとって、ウクライナ危機がロスチャイルドが言うような買いの機会となるのか、それとも手遅れになる前に株式や他のリスク資産から撤退するのか判断を迫られる問題だ。こうした状況では通常、問題は平和的に解決されることが多い。つまり、この場合、欧米がロシアのクリミア併合を黙認し、プーチン氏も納得できる新たな挙国一致内閣がキエフで発足するということだ。


新たな政府は対立解消のために、公用語としてのロシア語の地位を確約し、NATOやEUとウクライナの関係に対してロシアに事実上の拒否権を持たせる必要があるだろう。これが最も起こり得るシナリオで、ほとんどの投資家や企業が週末までにそうなると推測している。


問題なのは、可能性はかなり少ないものの、もう1つの選択肢であるウクライナ内戦が起きた場合だ。もしこれが現実になれば、欧州や世界経済、エネルギー価格、世界の株式市場に与える影響ははるかに大きい。