焦点:ドイツと中国の経済的蜜月関係に陰り、貿易拡大は頭打ち | Reuters
2012年に当時の温家宝首相がドイツを訪れ、2015年までに両国の貿易総額を2800億ドルに引き上げるという目標を打ち出した。この時は、それまでの2年で貿易額が54%増加して1800億ドルになっていただけに、野心的とはいっても現実味は十分と見受けられた。さらにユーロ圏債務危機と格闘していたドイツ政府が、中国との政治的、経済的な関係強化を築くのに熱心だったという事情もあった。
しかしそれから2年が経過し、貿易拡大は頭打ちでユーロ建てでは減少さえしつつある。ドイツ企業は、中国国内の賃金上昇や景気減速などを受けて、アフリカのサブサハラ諸国や中南米など他の新興国市場に事業を分散化している。こうした企業の間では突然のように、優先的に事業展開する場所として中国と並んでガーナやコロンビアといった名前が上がるようになった。
ドイツ産業連盟(BDI)幹部のシュテファン・マイア氏は「これまでわれわれはアジアを志向してきた。今は、多くの企業が他の地域に向かわなくてもよいのかどうか自問している。中国に大きな投資をしてきた企業はそうしたプレゼンスをより批判的に見直しつつある」と語った。
ドイツやその他の西側諸国は、国連安全保障理事会がロシアのクリミア編入を無効とすることを決議した際に、中国が反対せずに棄権に回った点を歓迎した。だが中国が他の重要な国際問題でロシアとの戦略的な協調路線を修正すると楽観する向きは乏しい。
ドイツ政府としては、中国が反日姿勢を一段と強めている点への懸念も抱いている。中国側は習首席が訪独中にユダヤ人大量虐殺(ホロコースト)記念施設を視察することを打診したが、これがまた日本に過去の反省を促すメッセージに使われると重々承知しているドイツは、この申し出を断った。
またドイツの政界や企業の間では、中国と経済的に緊密になれば不健全な依存関係が生まれることへの不安も聞かれる。
昨年は欧州連合(EU)が中国の太陽光パネルに反ダンピング課税を適用すると決定すると、中国からの報復措置に対する恐れが同国におけるプレゼンスが大きいドイツ企業に広がった。彼らはメルケル首相に全面対立を避けるよう働きかけ、結局は思い通りになったものの、中国がドイツ政府の決定に影響力を及ぼし得るという点が許容できない問題として浮上した。
あるドイツ政府高官は「われわれが中国に依存し過ぎれば、中国がそれを利用しようとするのは自明だ」と話す。
一方で中国としては太陽光パネル問題でドイツ以外の欧州諸国との関係も深めることの重要性が浮き彫りになった。
昨年5月の場合、李克強首相がEUの中で訪問先に選んだのはドイツだけだったが、今回習首席は既にオランダとフランスに向かい、ドイツの後には中国国家主席として初めてブリュッセルのEU本部に立ち寄って、ブリュージュの欧州大学院大学ではEUと中国の関係についての演説も行う。
ドイツ外交評議会(DGPA)の会長で中国専門家のエベルハルト・サンドシュナイダー氏は「習首席はブリュッセルを訪れることで、EU全体に目を向けているのだという明確なシグナルを送っている」と説明した。