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米「オバマ訪日」報道は、「寿司抜き」「安倍抜き」「尖閣抜き」 | 冷泉彰彦 | コラム&ブログ | ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト

 そもそもアメリカでは今回の大統領のアジア訪問に関しては、それほど大きく取り上げられていません。例えば、オバマ大統領が羽田空港に着いたのが日本時間の23日(水)の夕刻で、その映像はアメリカの同日の朝7時のニュースに間に合ったのですが、NBCの報じ方は「あのケネディ大使の赴任している日本」にオバマが行っている、というまるで「セレブ大使」のスター性を前面に押し出しての報道でした。

アメリカの23日夕方のニュースでは「寿司店での会食」の話題はほとんど報道されませんでした。どうしてかというと、一人300ドルという価格を考えると「贅沢な食事」とか「過剰な接待」というニュアンスで受け止められ、決して好印象にはならない危険があるからだと思われます。

 この「寿司抜き」に続いて指摘できるのが「安倍抜き」です。一連の首脳間の行事があったにも関わらず、アメリカでは安倍首相に関する報道もほとんどありませんでした。安倍首相の名前を出すと、靖国参拝ダボス発言などの「タカ派」という紹介をしなくてはならないし、その安倍首相との良好な関係を結んだという報道になってしまっては、オバマのイメージに合わないからだと思います。

 安倍首相の名前だけでなく、アメリカの報道では多くの話題がカットされています。例えば、24日にはオバマ大統領は明治神宮を訪問しました。「やぶさめ」見物が主という内容で、ブッシュ大統領の2002年の訪日時と同じ演出でしたが、米国では今回は報道されていません。時節柄、明治神宮靖国神社と混同されて誤解を受ける危険もあるからと思われます。この話題も、「日本の国内世論向け」のパフォーマンスという理解が必要でしょう。

 科学未来館でのロボット見物もそうで、こちらは報道されましたが、それほど好意的な扱いではありませんでした。米国では一部映像が流れましたが「大統領がロボットと遊んでいる」というMSNBCの報道、大統領が「人間の形をしたロボットは少々不気味だね」と発言した(米国の感覚では本当にそうなのです)というワシントン・ポスト(電子版)の記事といった具合です。

 そんな中で、首脳会談後の共同会見では「尖閣を安保条約の対象に含める」という「オバマ発言」が出ています。これは勿論、日本側が相当に押したのだと思いますが、オバマ政権としては思い切ったという感じがあります。これに関しては、さすがにニューヨーク・タイムズ(電子版)やワシントン・ポスト(同)などは詳細にレポートしており、中国サイドの反発も、また今回の発言も内容的には過去の閣僚級の発言を踏襲しただけだという解説もキチンとされています。


 ただ、この「肝心の」部分もテレビではほとんど報じられてはいません。多くの局は「首脳会談の結果、ロシアへの制裁で歩調を合わせることになった」という点をメインに報道していました。CNNの24日朝の段階では「それだけ」、NBCはさすがにチャック・トッド記者という大物を東京に送り込んでいるだけに、「中国との係争」について言及がありましたが、尖閣に関しては「島の映像を流す」だけで島名には言及していません。


 この問題に関して言えば、「尖閣問題を共同宣言に含めることになった」というのは、米国にとって大きな譲歩であることは間違いありません。ということは、逆に日本側も大きな譲歩を迫られることになり、それがTPPの豚肉・自動車問題のネックになっていると思います。異様なまでに交渉が難航した背景には、そうしたダイナミズムを感じます。ただ、この「文書化」についても、アメリカではそれほど大きくは取り上げられないと思います。


 いずれにしても、今回の首脳会談を一言で言い表すのであれば「同床異夢」であり、そのことは、アメリカの報道の「寿司抜き」「安倍抜き」「尖閣抜き」にあらわれていると思います。