成功していることの重さ、息苦しさに押し潰されるシリコンバレー
理詰めで考えて、失策をしないように細心の注意を払って、手堅く無難なコースを行く……これはシリコンバレーのエトスと正反対の態度であり、それをバレーのリーダー企業が無意識のうちに率先してやっているわけです。
スティーブ・ジョブズはリード・カレッジに行ったものの、両親が一生かけて貯めた貯金のすべてがどんどん学費に消えてゆくのを見て大学を辞める決心をします。お定まりの成功コースに背を向けるわけです。
「これは自分が一生の中で下した決断の中でベストだった」
彼はそう回想しています。
必修コースに出る必要がなくなったので、自分の興味や関心に基づいて、お習字の授業に出たりします。これがアップルの美しいフォントにつながった話は有名です。
ジョブズが主張していることは、点と点を結ぶことは、過去を振り返ってはじめて「ああ、そういうことだったんだ」とわかるということで、それをあらかじめ想定しながら利口にたちまわることはできないということです。