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聖書に書かれた未来−キリスト教の歴史観 岡崎 勝世 氏

──今日はそのキリスト教歴史観や先生の考えておられる歴史の見方など、いろいろとお伺いしたいと思っています。


驚いたことと言えばもう一つあるんですが、ニュートンの研究活動は聖書がベースにあったなど、これもまた意外でした。


岡崎 ええ。ヨーロッパでは16世紀から「大学者の時代」といえるほど著名な学者を多く輩出していきますが、こうした学者達は、皆、聖書の研究者でもあるんです。例えば聖書の冒頭にある「神は6日間で天地を創造した」という話には宇宙論の要素も含まれています。彼らはこうした記述を信じていたからこそ、それらを証明するために哲学や物理学など、およそ聖書に関わりがあると思われるすべての学問を研究し、発展させていったわけです。


当時の考え方を示すものとして「神の技、神の言葉」という言葉があります。つまり「神の技」というのは神が造り出したいろいろなもの、宇宙や大地などあらゆるものを指します。現在ではそれらは自然科学の対象ですが、それらの法則を知ることが神の意思を知ることとされた。また人間の社会は神の言葉を通じて成り立っている。したがって、この「技」と「言葉」に示されている神の摂理を探究しなければならないと考えていたわけです。こういうことが背景にあり、彼らは聖書を通じて自分達の社会の法則を知ろうとしていたんです。


ニュートンもそんな研究者達の一人で、最後は異端説にかたむきますが、熱烈なキリスト教探究者でした。彼の中では、自然に関する研究も、聖書に関する研究も、すべて神の摂理を解明する研究として、統一して捉えていたのです。

──新しい時代には、新しい問いかけが生まれる。つまりこれからも変わるということですか。


岡崎 ええ。そしてその問いかけは、自分の中から生まれてくるものなんです。学生達には、「歴史の分野で何をやりたいのか」というよりは、「今何を考えているのか」をいろいろ聞きます。若い人達は現在の世界でいろいろな悩みを持っているのだと思いますが、むしろそういう問題を真剣に考えていった方が、これから歴史を勉強していく中で良いテーマに行き当たるんです。何か過去の中で面白いものはないか、という発想でテーマを探していても、なかなか出てこないものなんですよ。


──自分への問いかけから自分なりの歴史の見方ができる…。歴史の勉強というのは自分自身の勉強でもあるわけですね。


岡崎 おっしゃる通りです。歴史学は過去を問題とし過去の事実によって縛られてはいますが、他面ではいろいろな考え方ができる大変楽しい学問なんです。

──ところで今盛んにグローバリゼーションということが言われ、これまで以上に外国の方や文化と接する機会が増えてきています。しかしヨーロッパの人達のように、聖書が今も深く影響しているなど、われわれ日本人とは明らかに違う点が多々あります。これは何もヨーロッパの人達だけとは限りませんが、こういった思想や文化、そして歴史観の違いは、大きな壁になってしまわないでしょうか。


岡崎 確かに違う面は多々ありますが、だからこそ相手のことがよく見えてくるのだと思います。私の大学に来ている外国人留学生達を見て感じるのは、これは私達が外国に行く場合にも同じことが言えると思いますが、ある程度自我が確立した時に外国に行く方が、その国への理解が進むのではないかということです。国際化というのは、お互いに同化すればいいというものではないですからね。


──なるほど。自分というアイデンティティーというか、軸がちゃんとでもできあがった上で接触する方が理解度も増すわけですね。


岡崎 ええ。むしろ親の海外赴任先で生まれて現地の学校へ行ったお子さんが日本に帰って生活する、と言う場合の方が苦労するんじゃないでしょうか。自我のないうちに違う文化の影響を受けるわけですからね。個性というのは、あくまでも生まれ育った場所でできるものですから。


──つまり、己を知り、相手を知るというか、そしてそれを通じてお互いの文化を知るということがますます必要になりますね。


岡崎 そこで大切なのは、尊重するということだと思います。


これも、われわれが学生達によく言うことなんですけれども、外国に行った際に「とにかくその国の人が大事にしているものをいち早く感じ取り、それを自分自身でも尊重しながら、その国の人といろいろ議論できるような、そんな感覚が大事だ」と言っています。これは若い人には是非身に付けておいて欲しいと思います。

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