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【正論】エリート律した「負い目」の喪失 - MSN産経ニュース

 いまでもこのようなエリートをめぐる文化がなくなったわけではない。私が尊敬するある経営者が、亡くなった同期の元同僚の思い出を語りながら、私にぽつりと言った。「彼が生きていれば、自分のようなものが今の地位にあるはずはない」。「負い目」という日本型ノブレス・オブリージュはなお生きていると思ったものである。しかし、エリートを取り巻く環境は大きく変わった。進学競争は完全競争に近くなり、死者との共感も薄くなった。大衆は苦労する無告の民から自己の権利と主張に急なクレーマーと化した。弱者への負い目感情を醸し出した構造が消滅した。


 かくて、いまの地位は偶然と幸運に恵まれたことによるかもしれないという自卑と、才能と能力によるものだという自尊の両方がせめぎあう不安感情だけがエリートの胸底に宿りやすくなった。それは、自らをただす負い目とは微妙に異なる感情である。自分はその地位に値しないのかもしれないという不安に由来する自尊感情の揺らぎにしかすぎない。


 そのせいだろうか、経営幹部や政治家の中には不安の裏返しともいえる傲慢な振る舞いをする人が少なくない。周囲にイエスマンだけを置きたがる傾向も目立つ。棚からぼた餅式で首相になった民主党の元総理が選挙民やテレビカメラの前では誠実そうに振る舞っていても、衆人の目がないところでは官僚や企業人に当たり散らしていたことはよく知られている。


 日本のノブレス・オブリージュをつくった「負い目」という美質が削(そ)ぎ落とされ、陰影と深みがない、成り上がり根性のみが残ってしまいつつある。そういう懸念を拭いきれない。

デーヴィッド・キャメロン - Wikipedia

1966年、ロンドンに生まれる。イートン校を経てオックスフォード大学で、哲学、政治学、経済学を学び、一級優等学位(first class honours)を得て卒業。

フランソワ・オランド - Wikipedia

1980年、フランス国立行政学院を7番で卒業

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