焦点:市場ボラティリティ沈静化、「今回は違う」は正しいか | Reuters
では、景気回復は行き詰まりを迎えており、FRBや他国の中銀は再び軌道修正を迫られるのだろうか。世界の経済成長率が中国の景気減速によって弱まり、欧州中央銀行(ECB)が緩和モードを鮮明にし続けている事実に限れば、あるいはそうなのかもしれない。
しかも米国の景気回復が5年目に入り、戦後2度の景気循環の1つの局面の継続期間が平均5年半だったことを考えると、歴史的に見て米景気が下降局面入りするという主張にも説得力がある。
だが、米国と世界の国々が転換期を迎えるとすれば、未だに株価がこれだけ押し上げられているのはなぜだろうか。
結論として、08―09年に経済が被った衝撃があまりにも大きかったため、多くのエコノミストは現在、景気循環の上で物価や賃金、金利の上昇が始まるまでに通常より2倍の期間を要すると推定している。
その考え方を主導したのはサマーズ元財務長官だ。彼は27日にロンドンで持論でもある「長期停滞論」をあらためて披露し、高齢化や技術進歩、また債務返済の動きによって、完全雇用が達成されるまでに超低金利状態が以前より大幅に長期化するとの考えを強調した。
こうした経済におけるスラック(需給の緩み)という考えが、FRBの政策変更をめぐる不安感が広がった後に市場に浸透していった。
BNPパリバの株式・デリバティブ投資戦略責任者のジェリー・ファウラー氏は、個別銘柄にそれぞれ乱高下があるとしても、市場のボラティリティが低下するかどうかは、このマクロ経済をめぐる見方で決まると考えており、「かなり強気の予想でも米国の需給ギャップは2017年まで解消しないとみられており、今回の景気循環は18年まで終了しないことを示唆している。我々の考えでは、現在株式を手放す行為は全く意味をなさない」と話している。