2年以内の2%目標達成は困難、時間軸政策に変更を=早川元日銀理事 | Reuters
元日銀理事の早川英男・富士通総研エグゼクティブ・フェローは29日、日銀の量的・質的緩和(QQE)政策について、現行の目標に掲げる2015年度をめどとした物価上昇率2%の達成は難しいうえ、拙速な実現は望ましくないとして、2%を緩やかに目指すとしつつ、長期の低金利政策を確約する時間軸(フォワード・ガイダンス)政策に移行することが望ましいと述べた。
<財政破たんリスク、刻一刻高まっている>
早川氏は富士通総研が都内で開いた記者向け説明会で、2%の物価目標について、人手不足や潜在成長率の低下といった供給の縮小で物価は上昇しやすくなっており、達成可能との見方を強調した。
ただし、日銀が昨年のQQEスタート時に掲げた「2年以内の達成は難しい」と指摘。一方で、国民の多くが2%の物価上昇を強く望んでいるわけではないため、追加緩和などで急いで実現する必要性はないと断言。安倍晋三政権が発足直後の昨年1月に政府と日銀がいわゆるアベノミクスの3本の矢(金融緩和と財政再建、成長戦略)を実現するとして結んだ共同文書(アコード)を改定すべきと提言した。
早川氏が懸念するのは成長力が低下する中で物価のみが上昇することによる長期金利の急上昇リスク。日本の潜在成長率は「日銀の『経済・物価情勢の展望(展望リポート)』の図表を見れば0.1%程度と、昨年10月時点の0.3%程度から低下している」と指摘。実質2%の経済成長を前提とした政府の財政再建計画の実現性が問われており、「財政破たんのリスクは刻一刻高まっている」と指摘した。
長期金利の上昇リスクは債券市場では必ずしも実感されていないが、「2%の物価上昇が視野に入ってくれば、長期金利は3%程度になる」との見通しを示した。
金融緩和からの出口戦略については、日銀が「保有国債を大量に売らなくても、当座預金への付利引き上げにより、市場金利の引き上げは可能。もっとも、その場合は大手金融機関に巨額の金利を払うため、厳しい政治的批判を受けるのは必至」と道のりの難しさを強調した。