なぜ、今、ノルマンディー上陸作戦を取り上げるのか|野中郁次郎のリーダーシップ論 ― 史上最大の決断|ダイヤモンド・オンライン
08年からナレッジ・フォーラムという場を主宰し、日本を代表する30社の経営幹部候補生の研修を行っている。その研修の一環で毎年恒例の夏合宿があるのだが、12年(5期生)、13年(6期生)と2年連続で、日本語訳が出たばかりのアントニー・ビーヴァーによる上下巻の大著『ノルマンディー上陸作戦1944』を事例研究に使ったのだ。テーマはリーダーシップである。
これまで私は、経営や戦争における人間の行動や組織・リーダーシップのあり方に興味を持ち研究を続けてきた。このノルマンディー上陸作戦という史上最大のプロジェクトの研究を進めるうちに、私の興味は、極めて複雑な人間関係をうまくまとめあげ、この巨大なプロジェクトを遂行していったリーダーシップとはどのようなものなのか、という点に絞られていった。
そこで、危機のリーダーシップをアリストテレスの唱えた「フロネシス」(暗黙知やコモンセンスを基盤とする実践知のことで賢慮や実践理性とも訳される)の切り口でとらえるべく研究を始めた。当初は、英国首相のチャーチルについて調べていた。ところが、チャーチルが作戦準備の過程で下したさまざまな決断を見るにつけ、連合軍最高司令官としてノルマンディー上陸作戦の指揮を執ったアイゼンハワーに心が引かれていったのである。
2014年5月、これまでの研究成果をまとめた『史上最大の決断』を上梓した。戦争を経営学の視点から描いた点に、この本のユニークさがある。アイゼンハワーの決断、アメリカ、イギリス、ドイツ各軍リーダーの判断、また戦術や武器のイノベーションなど、「実践と知性の総合」によって勝利したノルマンディー上陸作戦を題材に、本連載であらためて、複雑系の戦史から何を学ぶかを論じてみたい。
D-Day: The Battle for Normandy
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史上最大の決断---「ノルマンディー上陸作戦」を成功に導いた賢慮のリーダーシップ
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2006年頃から野中郁次郎がフロネシスの重要性を提唱し続けている。科学的知識と実践的知識を融合して、創造的な行動をする能力を指している。「個別具体的な場面のなかで、全体の善のために、意思決定し行動すべき最善の振る舞い方を見出す能力」である。深い倫理観、歴史観、社会観、政治観、美的感覚に基づく判断・行動である。そのため個人と社会の成熟が必要とされている。
http://d.hatena.ne.jp/d1021/20140528#1401274118
http://d.hatena.ne.jp/d1021/20140528#1401274120
http://d.hatena.ne.jp/d1021/20140526#1401101487
http://d.hatena.ne.jp/d1021/20100423#1271980790
http://d.hatena.ne.jp/d1021/20080127#1201425612