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塾長雑感 第226回 価値基準

経済的自由よりも精神的自由や人格的生存に不可欠な人権を優先する。国民の生命・健康に関する危険を防止するために加えられる消極目的規制については、社会・経済政策の一環としてとられる積極目的規制よりも、厳格に審査されなければならない。こうした考えは憲法を少しでも勉強したことのある人間なら当然の部類に属することです。憲法には価値の序列があり、個人の尊重に直結する人格権が経済的自由に優先することもまた、理解しやすいことです。

法律家として行政官として仕事をするときに、こうした価値序列を自分の中に持つことがいかに重要かを示しています。これまでの司法は、未知の問題に対して自らの頭で考えて自らの価値観で意思決定しその結果に対して責任をとる。そしてその結論を事実と論理と言葉で説得する、という法律家がやらなければならないことに真正面から向き合ってきませんでした。専門技術的性質が強く政策的判断が求められる問題には内容的に踏み込むのではなく、手続の適否だけを判断するべきだという理屈が司法の役割放棄の言い訳としてまかり通っていたようにも思います。


しかし、そもそも司法部門が政治部門とは別に存在する意義は、政治部門とは別の観点から判断することが必要だからです。政治部門の判断を追認するだけの司法であれば、その存在価値はありません。

ここで問題になるのは具体的な人間の生存です。抽象的な国家や社会、ましてや企業の存在ではないのです。結局は具体的な人間を重視するか国家を重視するかという根本的な価値基準に行き着きます。
そしてその価値序列を定めているのが憲法なのです。

法律を学ぶということは自分の中にしっかりした価値基準を創り上げるということに他なりません。それは自分自身の生き方においても大きな意味を持つものだと考えています。