欧州の信用不安というものを覚えているであろうか、というジョークが出そうな動きが欧州で起きている。2010年1月に欧州委員会がギリシャの財政に関して統計上の不備を指摘し、ギリシャの財政状況の悪化が表面化した。財政赤字の隠蔽が明らかになったギリシャ国債は暴落し、同様に債務状態が悪化していたポルトガルやスペイン、イタリアなどにも飛び火した。アイルランドやポルトガルが金融支援を余儀なくされ、その水準とされた長期金利7%という分岐点をスペインやイタリアも突破した。
しかし、スペインやイタリアの長期金利は7%を突破したところでピークアウトした。ECBによる政策などにより、ユーロ圏の信用不安は徐々に沈静化していった。ところが沈静化どころか、スペインやイタリアの長期金利はさらに低下し続け、ついには過去最低を記録するところまできている。
6月9日には、S&Pが格付けを引き上げたアイルランドの10年債利回りが過去最低水準を記録し、イタリアやスペインの10年債利回りも過去最低水準に低下した。その結果、スペインの10年債利回りは米国の10年債利回りを下回り、イタリアの5年債利回りは米国の5年債利回りを下回った。
今回のECBのパッケージ政策については、利下げとそれに伴う超過準備におけるマイナス金利により、資金が国債に向かいやすくなったことは確かであり、それがドイツ国債などに比べて金利面では高く見えるイタリアやスペインの国債買いに繋がったようにみえる。
しかし、この動きが当然であり、普通の出来事の如く認識して良いものであろうか。7%が行き過ぎであったのであれば、現在のイタリアやスペインの長期金利の低下も行き過ぎではなかろうか。そこにバブルのような芽はないのか。
皆が買っていれば安心できるというのもバブルのひとつの兆候である。水準よりも流れに乗ることで儲けに繋がり、乗ってこれないものが損をしたかに感じさせるのもバブルである。ユーロ圏でのバブルは始まったばかりなのかもしれない。しかし、長期金利が名目成長率などから乖離すればするほど、それはのちのバブル崩壊の要因となる。今はこの指摘も狼少年かと言われるかもしれないが、長期金利が暴れ出すリスクは常に意識しておく必要がある。