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【BOOK】佐高信さん、人間・田中角栄を通してみるいまの政治に欠けたもの - ZAKZAK

 ──角栄をテーマにしたことを意外に受け止める人も多かったのでは


 「私もロッキード事件当時は激しく批判しましたから、驚いている人は少なくないですね。ただ、いまここで角栄を取り上げることの意味を考えてほしい。なぜ、いまも人気が衰えないのか、自民党というより“田中角栄党”とは何だったのかを考えてみたいというのが動機でした」


 ──角栄の弱さやコンプレックスに着目していますね


 「角栄は女きょうだいに囲まれて育った『女の中の男』であること、吃音に悩んだということ、高等小学校卒であるという3つの宿命を魅力の源泉にしています。弱者の味方で、違う意見の人も生きていく価値があることを理解していた。味方にならなくても敵にならなければいいということです。私自身も反対する相手には100%ダメだと主張しているように思われていますが、そうではないと、今回の本で言いたかった面もあります」


 ──角栄のどんなところに魅力を感じますか


 「最初から隔絶した人ではなく、血のにじむような努力をした人でした。政治家の原点というのは、戦争をしないということと弱者の味方をすることだと考えますが、角栄はその2点を踏まえていた。それがいまの政治家には与野党問わず忘れられています」


 ──お金の配り方など、紹介されているエピソードも興味深い


 「お金を“与えてやる”という態度では死に金になる。“もらっていただく”という気持ちが大事だというのが角栄の考えでした。お金がコミュニケーションの手段だったということでしょう。ライバルの福田赳夫(元首相)は東大卒ということもあって、官僚や財界人にもあらためてあいさつはいらない。一方、学歴のない角栄にとっては、お金が名刺代わりだったのでしょう」


 ──「未完の敗者」というタイトルに意外性があります


 「最初は『田中角栄伝説』という書名で進んでいたんですが、偶然この言葉が浮かんできて、土壇場で変更しました。戦後民主主義も未完だったし、角栄自身も、角栄に対する一般の人々への思いも未完だったという意味が込められています。娘の真紀子さんにこの本を渡したとき、『敗者? 敗者?』とけげんな様子だったんですが、いろんな人がいろんなことを書くのは自由だという思いもあるのでしょう、続けて『ああ、デンティスト(歯医者)ね』と冗談めかしていました」


 ──角栄政治が未完に終わったと考えるのはなぜですか


 「中曽根康弘元首相が国鉄を民営化し、小泉純一郎元首相が郵政を民営化したことで終わったといえるでしょう。小泉氏が『自民党をぶっ壊す』と言ったのは、角栄政治をぶっ壊すということでした。角栄が郵政や国鉄に利権を持っていたのは間違いないですが、利権であると同時に、公共のものだという考え方も角栄にはあったはずです。公共を担うのが政治ですが、赤字か黒字かということだけで計ってしまうと、政治がなくなってしまう。こうしたことを庶民は肌身で感じているのではないでしょうか」


 ──角栄イズムは完全に失われたのでしょうか


 「いまの選挙制度で当選するのは二世議員ばかりで、与野党問わず東大卒の学歴エリートがほとんど。角栄のような庶民党の政治家が出にくくなっています。角栄失脚で見えなくなったものは何か、いまの政治に欠けているものは何かを思い出してもらうためにも、いまの政治家に読んでほしいですね」


 ──角栄へ思いを重ねるところもあったそうですね


 「角栄は3つの宿命を乗り越えましたが、私もコンプレックスを抱えて育ちました。また、角栄は新潟出身、私は隣の山形出身で、同じ雪国で理不尽な不幸を背負って生まれているという親近感もありました。いわば、嫌いになれないで困る親戚(しんせき)のおじさんのようなイメージでしょうか。書いてみて、嫌いになれない秘密が少しは解けたかなと」

http://d.hatena.ne.jp/d1021/20120528#1338215611
http://d.hatena.ne.jp/d1021/20100609#1276065796