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焦点:イラク内部崩壊で変わる勢力図、中東の国境再編も | Reuters

アルカイダ武装集団がイラク北部の都市モスルとティクリートを掌握したことは、イラク国内の宗派間の勢力図を塗り替えるだけではなく、中東地域の国境を再編する可能性がある。


スンニ派の過激派武装組織「イラク・レバントのイスラム国(ISIL)」は10日、イラク第2の都市モスルを掌握し、首都バグダッドに向けて攻勢を強めている。


こうした中、他の中東諸国や米国などの大国は、ISILが中東の中心部に危険な拠点を築き、「地中海のアフガニスタン」と化す危険性を認識している。

ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス(LSE)の中東専門家、ファワズ・ジョージ教授は「私たちが目にしているのは、権力の分裂であり、マリキ首相はこれまでのように中央集権化はできないだろう」と指摘。「国境の書き換えをまさに目の当たりにしている」と語った。

一方、クルド人自治区民兵組織ペシュメルガが、境界を接する北部の石油都市キルクークを制圧。混乱に乗じて勢力拡大を狙っている。

国際武装勢力アルカイダと袂を分かったISILは現在、バグダッドに向かって南進しているが、行き過ぎによって失敗する可能性があるとみる専門家もいる。だが、ISILの前任者らは2007━08年に米軍の支援を受けたスンニ派部族の民兵に負けを喫したものの、マリキ首相の宗派主義に対するスンニ派の怒りをうまく利用し、フセイン大統領時代の軍人たちを引き抜いた。


前述のジョージ教授は「実際、ISILに関する昨年の最も重要な動きは、解散した旧イラク軍の元高官や兵士たちを引き抜く能力を得たことだ」と指摘。「ISILの戦い方を見れば、統制がとれ、士気が高く、戦術を駆使した小さな軍隊だと分かる」と述べた。


また、ISILにはフセイン元大統領に忠実だった元バース党の高官やマリキ首相を打倒したい武装グループなどが合流。ISILがこれまで手中に収めてきたのはスンニ派の都市であり、ジョージ教授はスンニ派がマリキ打倒で結託していることに危険が潜んでいるとの考えを示した。

一方、100万人強規模のイラク軍は200億ドル以上かけて米軍から訓練を受けているものの、士気は低く、汚職がはびこり補給ラインを妨げている。

クルド人勢力によるキルクーク制圧は、フセイン政権崩壊後にイラクを1つに保っていたぜい弱な勢力バランスを覆すことになった。


クルド人勢力はイラク北部で自治権を握り、石油収入の一定の割合を与えられている。だが今回、膨大な石油埋蔵量を持つキルクークを完全に掌握したことで、自らさらに利益を得ることが可能となり、イラクにとどまる理由がなくなった。

中東諸国はこうしたイラク情勢に対し、複雑な反応を示している。


イラクシーア派によって支配されていることを断固として受け入れないサウジアラビアスンニ派の同盟諸国は、マリキ首相がシーア派のイランと同盟を結んでいることを嫌悪している。だが、マリキ氏失脚は望んでいても、それがアルカイダ系組織が実現することも望んでいない。


サウジとその同盟諸国は、イラクからシリア、そしてレバノンまでシーア派勢力のネットワークを構築したいとイランが考えているとみている。

専門家たちは、マリキ首相がシーア派民兵を動員すれば、全面的な宗派対立を引き起こす可能性があると指摘する。そして、イラクが崩壊し、シーア派スンニ派クルド人勢力がそれぞれ独立した存在となるとの懸念も浮上している。


前述のジョージ教授は「マリキ氏は火遊びをしている。これは大惨事を招く行為だ。全面戦争を引き起こすこと、まさにこれこそがISILの狙いなのだ」と語った。