焦点:世界で高まる地政学リスク、米軍には「疲れの色」も | Reuters
つい昨年まで米政府内では、イラク問題には完全に背を向けられるようになるとの楽観論が残っていた。しかし、アルカイダから派生した過激組織「イラク・レバントのイスラム国(ISIL)」がイラク国内で進撃を見せると、米国はいち早く反応。ペルシャ湾に空母を送り、特殊部隊員を含む数百人の軍事顧問をイラクに派遣したほか、空爆の可能性も検討している。
オバマ大統領は5月に陸軍士官学校で行った外交政策演説で、米軍は武力行使により慎重になる必要があると力説した。
しかし現実に目を向ければ、オバマ政権下の米国は、以前に比べて小規模であることが多いにせよ、世界各地に米軍を送り込むという姿勢は変えていない。
米国の軍事費は依然として世界で突出しており、一国だけで世界全体の3分の1以上を占める。
しかし、ロシアや中国との差は縮小傾向にある。2008年以降、両国の防衛費はロシアが30%、中国が40%増加した。中東やアジアでも、軍事支出を急激に増やしている国は少なくない。
さらに、多くの国が軍事力の大部分を自国の周辺地域・海域に集中させている一方で、米国の軍事力は世界各地に広く分散している。
米軍制服組トップのデンプシー統合参謀本部議長は今年3月、「予算上の制約により、多くのリスクを受け入れざるを得なくなっている」と語っていた。
現役の政府関係者や元当局者は、国防総省が抱える本当の問題は軍事的義務の多さではなく、福祉手当や年金のコスト、防衛装備品の調達費などが増えていることだとも指摘する。
先週にロイターのインタビューに応じたヘイル国防次官は、既存の兵器を新型に切り替える場合、コストは通常3倍に増えると語り、持続可能とは言えないと語った。
2011年まで米海軍大将を務めていたゲイリー・ラフヘッド氏は「混迷が深まる世界の傾向はすぐには変わらない」とし、「現在は海と空で対処できるレベルだが、時間が経つに従って、米軍に深刻な負担を強いるようになる」と述べた。