稽古において、始めは姿勢や動作など形があるものを真似します。
しかし実際には、形のあるものを真似しているだけでは、同じことを出来るようにはなりません。
「心が身体を動かす」わけですから、身体の状態を真似するには、心の状態まで真似する必要があります。形がないものを真似することが不可欠です。
藤平光一宗主の内弟子をさせて頂いていた頃、私は「相手を如何に投げるか」ばかりを考えていました。そのため、心の状態は常に乱れていました。
それは波立った水面の如く、水面に正しく映し出さなくなります。相手の心の状態がよく分からないので、技で相手とぶつかることが頻繁にありました。
何百回と宗主の指導のお供をするうちに、技のとき宗主の心の状態が静まっていることに氣づきました。
それは波静まった水面の如く、鏡のように正しく映し出します。心が静まっているとき、相手の心の状態が良く分かります。だからこそ相手を導けることを学びました。