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焦点:実体経済とかい離した「市場の熱狂」、金融政策に難題 | Reuters

ポルトガルの銀行の経営問題が世界の金融市場に波紋を広げたり、国際決済銀行(BIS)が市場の浮かれすぎに警鐘を鳴らすといった出来事を機に、適切な政策対応のあり方についての議論が活発化している。


BISは2週間前、超低金利のせいで各国政府や金融市場が誤った安心感を抱いていると警告。「全般的に見て、市場の活況と、その根底にある世界経済動向との奇妙な分断を感じざるを得ない」と疑問を呈した。


ポルトガルのバンコ・エスピリト・サント(BES)の経営問題が先週、世界市場を揺さぶったことで、BISの苦言は説得力を増した。


ポルトガルにはBESを救えるだけの資金がある上、一族経営という性質上、リーマン・ショックからユーロ圏債務危機に至るような危機の再燃につながる可能性は小さい。


しかしより幅広い問題、つまり市場の熱狂と経済実体とのかい離という問題は残る。株価は過去最高値を更新し、英国などの国々では住宅価格が高騰している。


6月の米連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨では、政策当局者が一定の懸念を抱いていることが示された。


議事要旨には「株式、通貨、固定利付き市場のインプライドボラティリティの低さ、およびリスクテーク増加の兆候について一部の出席者は、市場参加者が景気と金融政策の軌道の不確実性を十分織り込んでいないことの表れと見た」とある。


連邦準備理事会(FRB)にできる、あるいはFRBがすべきことはあまりない、というのが彼らの結論のようだ。これに対してBISの主張は「できることはある」、つまり利上げすべきだというものだ。


オレゴン大学の経済学教授、ティム・デューイ氏は「FRBはまだ、経済成長を犠牲にして金融安定を図ろうと試みるほど市場の慢心を強く懸念していない」と解説する。


バンク・オブ・アメリカメリルリンチエコノミストチームによると、FRBは引き締めを早めるよりは遅らせる方に傾いており、欧州中央銀行(ECB)はデフレの危機がもっと差し迫らない限り量的緩和に合意しそうになく、他の中銀は引き締めを示唆することさえ困難な状態。「この結果、金利とFXボラティリティが歴史的な低水準に下がり、経済統計やファンダメンタルズとの相関性が断ち切られた」


<BISビューに厳しい反発>


ラリー・サマーズ元米財務長官などの識者は、世界は「長期的停滞」期間に入ったため、一段と金利を引き下げる必要さえあると主張している。


仮に超低金利が続くと想定すれば、金融市場の見え方は異なってきて、さほど過熱していないということになる。しかしインフレが戻って中銀が対応を迫られるようなら前提はすべて崩れる。


ノーベル経済学賞を受賞したポール・クルーグマン氏はBISの言い分について、要するに資産バブル阻止を目的に金利水準ターゲットを設けよという主張だと指摘。その帰結として「投資家の根拠なき熱狂を抑制するため、永遠に抑圧された」経済が訪れると批判した。


オックスフォード大学の経済学教授、サイモン・レンルイス氏はもっと手厳しい。


教授はブログで「われわれは、ほとんど規制されていなかった金融システム内で起こった過剰なリスクテークのせいで、大不況の辛酸を舐めさせられたばかりではない。彼らがまたやるかもしれないという理由で、今度はその不況から抜け出す主要な手段さえ断たれるというのだ」と嘆き、「そうした人々がどの惑星に住んでいるのか知らないが、私と同じ惑星なら、お願いだから別の惑星に移って自分のゲームをやってくれないか」と綴った。


レンルイス教授はスウェーデンの例を挙げる。同国は2010年、インフレの脅威が存在しなかったにもかかわらず家計債務と住宅バブルへの懸念を理由に利上げに踏み切った結果、インフレ率がゼロに近づき、今月利下げを実施した。


各国中銀がBISの助言に従う兆候はほとんど見受けられない。イエレン議長以下のFRB高官は、資産バブル抑制には住宅ローンの規模に関する規則を厳格化するなど、「マクロプルーデンス政策」を使うのが適切だとしている。


FRBは10月に債券購入を中止し、イングランド銀行(英中銀)は遠くない将来に利上げを実施する見通しで、ECBは量的緩和に後ろ向きだ。つまり市場を押し上げてきた流動性供給が徐々に絞られると同時に、欧州では年内に銀行ストレステスト(健全性審査)が控えている。


スピロ・ソブリン・ストラテジー(ロンドン)の責任者、ニコラス・スピロ氏は「問題はバンコ・エスピリト・サントではない。ユーロ圏周縁国のお粗末なファンダメンタルズと、この地域の金融市場の好調ぶりが心配なほどかけ離れていることだ」と指摘。「中銀の寛大な流動性供給と、ユーロ圏の経済的、金融的、政治的脆弱性との綱引きは、後者が優勢となっている。問われるのは、エスピリト・サントの問題をきっかけに投資家がユーロ圏のリスクについての慢心から揺り起こされるかどうかだ」と語った。

http://d.hatena.ne.jp/d1021/20140714#1405335170
http://d.hatena.ne.jp/d1021/20140711#1405075182
http://d.hatena.ne.jp/d1021/20140703#1404384150