ロシアによるウクライナ南部のクリミアの一方的な編入と東部の不安定化に関与したとして、アメリカとEU=ヨーロッパ連合は、ロシアに対する制裁を強めています。
こうしたなか、外国への旅行ツアーを扱うロシアの大手の旅行会社3社が、5日までに相次いで業務停止に追い込まれました。
これを受けて、チャーター便も運航停止となり、すでに旅行先に滞在している人たちがロシアに戻れなくなったり、旅行代金を支払った人たちが返金を求めて旅行会社に押しかけたりするなど、数万人に影響が出る事態となっています。
業務を停止した旅行会社は「通貨ルーブルの下落と、政治情勢を受けた旅行者の減少による措置」としており、欧米の制裁による自国通貨の下落と、ヨーロッパを敬遠して旅行者が減ったことにより、急速に経営が悪化したものとみられます。
一方、ロシアの経済紙「ベドモスチ」は5日、ロシア政府がEUの制裁に対抗する措置として、ヨーロッパの航空会社に対して、シベリア上空の飛行を禁じることを検討していると伝えるなど、ロシアが報復に踏み出す可能性を指摘しています。
これはロシアのプーチン大統領が5日、地方の知事代行と会談した際に明らかにしたものです。この中でプーチン大統領は「政治的な道具として経済に圧力をかけることは受け入れられない。あらゆる規範やルールに反する」と述べて、ウクライナ情勢を巡るアメリカとEU=ヨーロッパ連合などによる追加制裁を強く批判しました。
そのうえで、メドベージェフ首相率いる政府に対して、「すでに対抗措置を検討するよう指示した」と述べ、欧米の圧力には屈しないとする姿勢を強調しました。
一方で、プーチン大統領は「国内の生産者を保護し、消費者が損失を受けることがないよう極めて慎重に行う必要がある」と述べ、対抗措置の実施にあたってはロシア経済への影響を最大限考慮する考えを示しました。
これに先立ってロシアのメディアは、ロシア政府がヨーロッパの航空会社に対して、日本などアジア行きの航空便が通過するシベリア上空の飛行ルートの閉鎖を検討していると伝えていて、ロシアが実際にどのような対抗措置に踏み切るのか注目されます。