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円安でも伸びない輸出、アベノミクスの効果息切れ−疑問の声 - Bloomberg

円安になれば輸出が伸びて景気がよくなるとの期待が薄れつつある。輸出が低迷し、景気を押し上げる勢いがなくなっている一方、円安で輸入物価が上昇しているためだ。


第2次安倍政権が発足して1年半以上が過ぎた。アベノミクスを背景に円は対ドルで16%下落した。円安は輸出にとって追い風になる一方、輸入物価を押し上げる。現時点ではデメリットが目立ち始めており、政府・日銀の悩みの種となっている。


ゴールドマン・サックス証券の馬場直彦チーフエコノミストは「円安にしたときに輸出の数量が伸び、国内に生産誘発効果を生み、経済の拡大均衡を見込んでいたが、そのパスが全く動いていない。何のために円安にしたのか」と述べた。


今年1−3月期の燃料輸入額は2012年1−3月期に比べ1兆5600億円増えた。これに対し、全体の輸出の増加額は1兆2800億円にとどまった。鉱工業生産も2年前と比べ減少している。過去10年間の製造業の人員削減は100万人に達した。


アベノミクスリフレーション


安倍氏が首相に復帰した12年12月時点の日本経済はそれまでの5年間で34%対ドルで上昇した円高に苦しんでいた。製造業は国外に生産拠点を移し、コストと賃金を削減した。10年以上にわたって需要は抑制され、消費者物価は低下していた。


安倍氏は13年の年頭所感で「日本にとって何より喫緊の課題は、デフレと円高からの脱却による経済の再生だ」と述べた。安倍首相の政策はアベノミクスと呼ばれ、日銀による量的・質的緩和、財政出動規制緩和で経済成長を促すことを狙いとしている。安倍首相が任命した黒田東彦日銀総裁は13年4月から異次元の緩和を実施している。


アベノミクスの効果で消費者物価(CPI)は上昇し、輸出メーカーの利益も増えた。TOPIXは昨年1年間で51%上昇した。しかし、その効果は色あせ輸出は伸び悩んでいる。6月の輸出量は円安が始まった12年9月に比べ2.5%減少した。


製造業の構造変化


JPモルガン証券の菅野雅明チーフエコノミストは「製造業の構造変化で円安のプラスの効果がそんなには見えていない」と述べた。


黒田総裁は8日の会見で、「行き過ぎた円高が是正されたことは日本経済にとってかなり大きなプラスになっている」と指摘した上で、「為替レートが円高になっていかなければならない理由はない。それがまた日本経済にとってマイナスになることもない」と述べた。


多くの製造業は円高が続いていた時期にコストの低い外国に生産拠点を移し為替相場の影響を和らげようとした。ホンダは北米産が国内産を上回り、米国からの輸出が日本からの輸入を超えた。


輸入額は11年3月の福島第一原発事故で稼働を停止した原発の代替燃料の輸入が急増したことなどで膨らんだ。貿易赤字は過去最高となり、1月には2兆8000億円に達した。


ゴールドマンの馬場氏は「日銀による大きな誤算は、円安による望ましい効果であるはずだった輸出数量増加が見えてこないこと」と指摘した。


黒田総裁は先月、「輸出については4月にプラスになった後、5月はマイナスとなるなど伸びが弱く、回復若干後ずれしている感があるのはその通りだ」と述べた。

 
交易条件の悪化 


内閣府は「2014年度年次経済財政報告」の中で「円安方向への動きにより交易条件は悪化し、それに伴って交易利得も悪化する傾向があるが、その影響が大きくなっている」と述べた。内閣府の試算によると、今年1−3月(第1四半期)までの5期間で交易損失は3倍に拡大し、そのほとんどが為替に起因している。


第一生命経済研究所星野卓也エコノミストによると、鉱工業全体の総供給に占める輸入品の割合である輸入浸透度は、11年にピークの24.4%をつけ、その後も23%台に高止まりしている。星野氏は「円安になると、直接物価に対する影響が出やすくなる」と指摘した。


野村総合研究所金融ITイノベーション研究部の井上哲也部長は「CPIだけ上がっていくと、日本全体としての実質購買力が下がる。日銀は非常に困ってくる。こういう形で物価が上がるとインフレ目標を達成しても正常化できない」と語った。

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