オバマ大統領は10日、イスラム過激派組織「イスラム国」に対処する戦略について演説し、「イラク同様にシリアでも軍事行動をとることをためらわない」と述べ、イラクに限定してきた空爆を今後、シリアにも拡大する方針を示す一方、大規模な地上部隊は派遣しないと改めて強調しました。
これについて、野党・共和党のベイナー下院議長は10日、「大統領の計画を支持する」という声明を発表し、議会は与党・民主党だけでなく野党も大統領の方針を支持しました。
一方、アメリカの新聞「ワシントン・ポスト」は「空爆を拡大し、数百人規模のアメリカ兵を追加派遣することは、アメリカを戦争状態から脱却させると世界に約束した最高司令官にとっては大きな後退だ」として、イラクとアフガニスタンからの軍の撤退をみずからの成果として強調してきたオバマ大統領にとっては大きな誤算だと伝えています。
また「ニューヨーク・タイムズ」は「ひとたびシリアで空爆を始めれば後戻りできないのは、アメリカがイラクやアフガニスタンで学んだ教訓だ」として軍事作戦の長期化は避けられないと指摘し、懸念を示しました。
アメリカのオバマ大統領が、空爆の範囲をシリアにも拡大する考えを示したことについて、シリア国内でイスラム過激派組織とアサド政権の双方と敵対している反政府勢力「シリア国民連合」のバハラ代表は、11日、オバマ大統領の決断を評価する声明を出しました。
声明で、バハラ代表は「われわれは長らくこの決定を求め続けていた。われわれが必要な支援を受け、装備を充実させることができれば、過激派組織や独裁者からシリア国民を守りぬくことができる。われわれはきょう、この目標に一歩近づいた」と述べています。
そして、アメリカ議会に対しては、オバマ大統領が示した反政府勢力への訓練や装備品の提供を直ちに承認するよう求めています。
そのうえで、「アサド政権こそが混乱や無秩序を招いている根本原因だ」として、過激派組織だけでなくアサド政権の打倒に対しても、国際社会の積極的な関与を求めています。