【評伝】経済学者の宇沢弘文氏 成長優先の政策を批判 環境保全の発信にも注力 - MSN産経ニュース
9月18日死去した経済学者の宇沢弘文氏は、経済成長モデルを発展させた理論経済学者として名前を知られた一方で、利益追求の不確実性にも目を向け、後年は環境保全をはじめとする社会問題の切り口からも発信を続けた。
宇沢氏は経済成長モデル理論を従来の単純なモデルから、「消費と投資」といった2部門で構成される洗練された経済成長モデルに改良。安定成長に向けた条件を提示し、国内外の研究者に大きな影響を与えた。
だが、統計や情報の組み合わせで経済を予測する合理的成長を目指す理論が米欧で台頭してくると、こうした成長優先の政策に批判的な視線を投げかけた。
国内の経済学者の一人は、「人間の行う経済がそう合理的に見通せるはずがない、という宇沢さんなりの直感があったのではないか」と振り返る。
後に宇沢氏が手掛けた地球温暖化をはじめとする環境保全などの発信も、成長優先に対するアンチテーゼ(反対命題)によるものとみられる。リーマン・ショック以降、米国の経済学は合理的な成長期待の理論を一部修正し始めており、その「直感」の正しさを裏付けている。