老いてこそ輝く、中高年のイノベーターたち | HBR.ORG翻訳マネジメント記事|DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー
一方、発達心理学の権威であるエリク・エリクソンによれば、人間は歳を重ねるほどに、意義を追い求めることでより精力的になるという。彼の理論では、健康的な人間の幼児期から成熟期の過程を8つの発達段階に分類している。このうち第7段階(壮年期)に当たる40〜64歳頃の年齢層は、停滞よりもむしろ、生産性や創造性が色濃い「次世代育成能力」(generativity:自分たちの後に続く世代を育成・支援しようという積極的な気持ち)を軸に展開する。人々はこの段階に到達すると「意義のある人生を送るにはどうすべきか?」と自問するようになり、自分のためだけでなく他者のために価値を生み出そうという目的意識を強く抱くそうだ。
40歳以上の層は、自分自身のためだけでなく、次の世代に関わる仕事に従事する傾向が高いことも特徴だ。
大企業は、高賃金や条件のいい医療・退職手当という形で社会に経済的な安定をもたらす。これと同様に、経験豊富な従業員は、職場の知的・精神的支柱となり、イノベーションにつながる専門知識を提供してくれる。破壊的イノベーションとは、だれも望んでいない場所(低価格帯)に参入したり、だれも想像しなかった分野(新市場)に進出したりすることだ。エリクソンの定義による第7段階に入った人々は、新たに何かを創造することを単に「素敵なこと」とは考えていない。彼らにとってそれは、精神的に必要不可欠なことだ。「何かを創造し、人生を価値あるものにしたい。たとえそれが孤独や恐怖を伴うとしても」――この衝動が、彼らのイノベーションを駆り立てるのだ。