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減り始めた「ドリル」、原油安が左右する世界経済のリスク | Reuters

シェールオイル掘削用ドリルの数が減り始めた。原油価格の急落で採算割れを起こした米国油田が増えていることが背景とみられている。原油をめぐる情勢は不透明感が強く先行きは見通しにくいが、米国産油が減り、需給が締まれば、原油も下げ止まる可能性が大きい。


ただ、原油下落が継続するようなら、新興国からの資金流出が加速し、金融市場が混乱するリスクシナリオもささやかれている。

米国のベーカー・ヒュー社が公表している米国シェールオイルの掘削動向を示すリグカウントRIG-OL-USA-BHIが、減少に転じている。リグカウントとは掘削機(ドリル)による掘削数。将来、原油生産井が増加することにつながるため、産油能力に先行するデータとみられている。


オイルのリグカウントはシェールオイルの生産が増え始めた2009年ごろから急増し、200以下のレベルから今年10月10日には1609のピークを付けた。だが、その後減少に転じ、最新データの今月21日時点での数値では1574。足元で原油価格が急落する中、採算割れを起こしたシェールオイル油田が増えてきていることが背景のようだ。


原油価格が70ドル付近まで下落すれば、米シェールオイル油田の多くが採算割れにおちいる。米国のシェールオイル生産が減少に転じれば、需給が締まり、原油価格の下落傾向もストップするのではないか」と、ばんせい投信投資顧問・商品運用部ファンドマネージャーの山岡浩孝氏は話す。

石油輸出国機構(OPEC)は27日の総会で、日量3000万バレルの生産枠を維持することで合意し、減産を見送った。北海ブレント原油先物LCOc1は4年ぶり安値となる1バレル=71.25ドルまで下落。米原先物CLc1は1バレル=67.75ドルと2010年5月以来の安値を更新している。


5時間に及んだ今回の会議では、ベネズエラやイランなどの財政力が弱いOPEC加盟国が求めていた減産を、サウジアラビアを初めとする財政力のある湾岸諸国が押し切る形で生産枠据え置きが決定された。原油が世界的に供給過多となっているにもかかわらず、減産に動かなかった背景は「シェールつぶし」があるとの見方が一般的だ。


「最近の原油価格の下落は、需要要因以上に、シェールオイルの供給増、その下での価格カルテルの影響力の低下、シェールオイルの生産を採算割れに追い込む一部産油国の意図等、供給要因を背景としている」(シティグループ証券・チーフエコノミストの村嶋帰一氏)という。


もしそうであれば、米国産シェールオイルの生産が減少し始めれば、その目的は達成される。徹底的につぶしにかかる可能性もあるが、財政力が弱いOPEC諸国からの不満への配慮も必要だ。米国シェールオイルのリグカウントが実際に減少し始めたことで、産油国からのプレッシャーも緩みはじめるのではないかとの見方が広がっている。

原油安はドル高要因だ。モノの価格が下がれば、相対的にマネーの価値が上がるだけでなく、資源国通貨が売られることでドルが相対的に上昇する。さらに、原油安によって、物価下落圧力がかかることで、日本などでは追加緩和観測も高まる。


実際、28日朝に発表された10月消費者物価指数(除く生鮮、コアCPI)は、消費税の影響を除き前年比で0.9%と1年ぶりに上昇率が1%を割り込み、市場では日銀の追加緩和期待が高まった。原油安で輸入物価上昇が抑制されれば、円安への許容度が増し、日銀は追加金融緩和が行いやすくなるという思惑も出ている。


「先進国の物価が上がりにくい中で、日本のコアCPIは実質0.5%前後まで下がる可能性がある。2015年度前半にかけては、物価目標を掲げている中央銀行にとって、つらい時期になるだろう」とSMBCフレンド証券・チーフマーケットエコノミスト、岩下真理氏は話す。

原油安が止まれば、この面からのドル高圧力は緩和される。28日の東京市場で、ドル/円JPY=EBSは118円前半で伸び悩んだ。米経済の好調さや利上げ観測など原油以外のドル高要因も多く、ドル高トレンドに変化はないとしても、これまでのような上昇ピッチは陰りを見せている。


大和証券・チーフ為替アナリストの亀岡裕次氏は「シェールオイルの採算ラインに近づいたことで、原油価格もそろそろ底かもしれない。この面からのドル高圧力もそろそろ一服だろう」の見方を示す。


原油安はエネルギーコスト減少という点で世界経済全体でみればプラス要因だが、資源国にとってはマイナス要因だ。急激な原油安が他の1次産品価格に波及するとの懸念が広がれば、産油国であるロシアだけでなく、資源国のブラジルなどからマネーが流出し、その国の株安、通貨安を招いて、金融市場に緊張感が走るというリスクシナリオのがい然性も高まる。


欧州の金融機関は中東諸国へのエクスポージャーも多く、この点も警戒されている。足元の急激な円安や日銀の金融緩和策は賛否両論であり、原油安によって無理やり追加緩和に追い込まれるのが、日本にとってプラスとは限らない。


原油安の中長期的な大きな背景には、中国をはじめとする新興国経済の減速がある。需要面での懸念は晴れないとしても、やや人為的な供給面からの価格下落圧力が後退し、原油市場が落ち着くことにはメリットも大きい。