https://d1021.hatenadiary.com
http://d1021.hatenablog.com

哲学書新刊情報

【2月10日発売予定】
『複数世界の思想史』(長尾 伸一著 名古屋大学出版会)
Amazon紹介文】「自己中心性に根ざす単一性論が促進してきた「近代」を問い直す圧倒的な力作」
Amazon】→ http://www.amazon.co.jp/gp/product/4815807965

単性説 - Wikipedia

キリストは神性と人性という二つの本性を持つという立場(両性説)によって否定された立場である。

合性論 - Wikipedia

合性論においては、イエス・キリストの一つの位格の中で神性と人性は合一して一つに、つまり一つの本性(フュシス)になり、二つの本性は分割されることなく、混ぜ合わされることなく、変化することなく合一する。

世界の複数性に関する欧米(英、仏、伊、米)と日本のニュートン主義の比較研究 長尾 伸一 研究助成 サントリー文化財団

「世界の複数性」説は、地球外に知的生命が生存する世界が存在することを主張する。それは古代世界に流布し、キリスト教神学の一部に取り入れられていたが、近年の科学史研究によれば、近代では地動説の確立とともに復活し、19世紀初頭にはほぼ知識人の常識となっていたことが判明している。

近代の複数性論は地球以外の惑星上に知的生命を含んだ生命系が存在することを意味するが、一般的に「複数性」とは、人間が知らない統一的な世界が異次元にであれ、宇宙のどこかにであれ存在し、そこには人間と同じ存在や、想像もつかない異なった存在が生存しているという考え方である。この観念に基づけば、人間の思考、観念は、他世界では通用しないかもしれないということになる。言い換えれば、人間にはつねに見たことがないもの、自分が知らないものがあり、どれほど知的探求を繰り広げても、この根源的な存在状況は変わらない。そのため「知らない世界」を想定しながら生きることを余儀なくされる存在である。

この自己を自己の外に置こうとする離脱衝動(エクスタシス)は、多様な言語、文化、エスニシティの競合と統合として展開してきたヨーロッパ史の特徴に基づいていると想定できる。

長尾「19世紀ブリテンの「世界の複数性」論争」 - do do pi do

 19世紀の地質学についての話のなかでときどき出てくる「世界の複数性」という言葉についてざっと知りたくて読んだ。

 カントは「世界市民的視点からの普遍史の構想」(1784)において、地球以外の「惑星の住民」は人類よりもすぐれているかもしれないと述べている。他にもライプニッツニュートンヴォルテールディドロなど、18, 19世紀には多くの思想家や科学者がこのような「地球外知的生命」の存在をめぐる問題=「世界の複数性」論争に参加している。

 天文学的困難に加えて宗教的問題点もあった。惑星人が存在するなら、キリストが複数いるのか、それとも他の惑星人は見捨てられたのか。

 オックスフォードの幾何学教授かつ国教会の聖職者バーデン・パウウェルは『帰納哲学の精神、諸世界の統一性および創造の哲学に関する論考』(1855)でヒューウェルとブリュースターの論争を検討し、惑星人を擁護した。彼によれば、宇宙の物質世界の全体にわたって、無機物から有機物へ、無感覚な存在から知的で道徳的な存在へと移っていく進歩の段階があるという。また神による惑星人の救済を疑うのは「人間化された狭い考え」であり、キリスト教は「帰納法」の立場からより広く理性的な存在で定義されるべきだと彼は主張する。