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焦点:中国人民銀に試練、流動性供給の効果奪う資金流出構造 | Reuters

中国人民銀行中央銀行)は減速している経済に何とか刺激を与えたいと必死になっている。ただ伝統的な金融政策手段が思い切って使えず、別の戦術を採用せざるを得ない状況にあり、金融調節面で大きな試練にさらされている。

通貨供給量を管理し、金利水準を誘導する上で透明性が高いのは公開市場操作(オペ)だ。しかし金利を低めに持っていくために短期市場で資金を供給しても、中国が直面する資金流出の拡大を穴埋めできず、効果がないことが証明されている。


実際に市場参加者によると、人民銀行によるオペの効果が持続的な資金流出のせいでどんどん効力を失っていったので、とうとう昨年12月初めにはオペはほとんど実施されなくなってしまった。


ANZ(上海)のエコノミスト、ゾウ・ハオ氏は「貸出金利を押し下げるのは非常に難しい。これは根深い問題だ。短期市場への資金供給は市場の不安を鎮静化することができるだけで、金利を下げるための長期的な流動性はもたらさない」と指摘した。

人民銀はこうした市場調節の代わりに、臨時貸出制度(SLF)や中期貸出制度(MLF)といった、いわば裏口から銀行向け与信枠を直接的に拡大する新たな手法に頼っている。


もっともこれらも流動性は提供するものの、その不明瞭な性格から多額の債務を抱えた中国企業の資金調達コストを低くする効果は今1つだ。

そして結局のところは、長らく続いた外貨準備蓄積の流れの反動と中国企業が2014年を通じて対ドルでじりじりと下がってきた人民元をますます保有したがらなくなっていることが相まって、せっかくの大規模な流動性供給が無効化されてきた。


JPモルガンのエコノミスト、ズー・ハイビン氏は22日の調査ノートに「外貨準備蓄積を通じた流動性注入という伝統的な経路はなくなっている」と記し、14年下半期には外貨準備が毎月減少したと付け加えた。


ロイターが公式統計に基づいて計算したところでは、昨年12月の中国企業による人民元売却規模は190億ドルと、7年ぶりの高水準になった。


中国企業人民元を積極的に売るのは対ドルでの為替差損から身を守るためで、資金の奪い合いが激しい国内資本市場から締め出された企業がドル建ての借り入れに依存するようになって、こうした為替リスクは増大している。

問題は資金流出だ。これはドル建て資産の利回り上昇で人民元建て資産の魅力が薄れたり、中国政府による改革のために海外投資が容易になったことが影響している。


資金流入も最近は枯渇する様相を呈してきた。外国人による中国株直接購入の道を開いた香港株と上海株の相互取引が低調な滑り出しだった上に、マークイットのデータによると、昨年第4・四半期に中国本土の株価指数が50%上昇したにもかかわらず、中国関連の上場投資信託ETF)からは大規模な資金が流出した。


ロイター・リッパーIMのデータでも同様の傾向が見られ、中国専門ETFは平均で2億7500万元(4430万ドル)、全体では340億元が昨年12月に逃げ出した。

こうした事態は全て中国政府にとって厄介な問題を生み出している。


当局がもし、国内短期金融市場に緩やかに資金を流し込みたいのであれば、今年は海外投資に向けたこれ以上の新規口座開設を停止したり、口座を縮小する必要があるかもしれない。


逆に口座開設を認める方針を維持したいなら、すべて流出することが不可能なほど膨大な資金を供給しなければならないだろう。


これは銀行預金準備率(RRR)の引き下げを意味する。だがエコノミストはRRR引き下げが、当局が過去2年でようやく縮小させてきた資産バブルを再燃させかないと懸念している。昨年11月の利下げ以降の中国株高騰は、その大半が異常に活発な借り入れを原動力としている点を踏まえれば、資産バブルの心配を高める結果になった。


JPモルガンのズー氏は「人民銀による最近の対外発信からすると、RRR引き下げに反対ではないものの、金融政策の波及経路における構造問題に不安を抱いていることがうかがえる」と述べた。その不安とは、資金供給が不動産投機に回り、生産的に利用されるよりも過剰投資を招く展開になることだという。


ロイターの計算では、融資の乗数効果を考慮に入れると、RRRの引き下げによって最大で2兆4000億元が供給される可能性がある。


人民銀はそこまで踏み切るかどうかはともかくとして、既に政策手法の変更を示唆している。


22日にはオペを再開して7日物の資金500億元を供給した。適用金利は3.85%で、4%超という現在の指標短期金利の水準を低めに誘導したい意図が見える。


また一部のMLFについて、四半期報告よりも前倒しで結果を公表(ただし資金供給先の銀行名は非公表)するとして透明性向上の姿勢も示した。


それでもANZのゾウ氏は、そうした金融政策は、経済成長を高めるよりも、事態のさらなる悪化を防ぐ効果しかないことが判明するだろうとの見方をしている。