日本時間24日午後11時すぎ、インターネットの動画サイトにイスラム過激派組織「イスラム国」とみられる組織に拘束された後藤健二さんが、オレンジ色の服を着て写真を持っている画像が投稿されました。
画像の冒頭には、「後藤さんの家族と日本政府が受け取ったものだ」とする英語の文章が表示されます。
画像には、後藤さんを名乗る男の声で英語の音声が付いていて、「これは私と共に拘束された湯川さんが殺害された写真だ」と述べています。そして、「妻よ、愛している。2人の子どもに会いたい」と呼びかけたうえで、「同じことを繰り返させないでくれ。諦めないで、家族や友人、そして私の会社の同僚と共に日本政府に圧力をかけ続けてくれ」と述べています。
さらに、「イスラム国の要求は難しいものではない。彼らはもはや金を要求しておらず、テロリストに資金を渡す心配をする必要はない。彼らはヨルダン当局に拘束されているサジダ・アル・リシャウィの釈放を求めているだけだ。彼女が釈放されれば私も解放される」と述べ、ヨルダンで拘束されているイスラム国の関係者とみられる人物が釈放されれば、それと引き換えに後藤さんが解放されるとしています。
中東のメディアによりますと、サジダ・アル・リシャウィという人物は、2005年にヨルダンの首都アンマンで50人以上が死亡した連続自爆テロ事件の実行犯の1人としてヨルダン当局に拘束され、翌年の2006年に死刑判決を受けたイラク人の女とみられています。
今回の画像の信ぴょう性が認められれば、「イスラム国」とみられる組織がこれまでの身代金から、ヨルダン政府に拘束されているとする仲間の釈放に要求を変えたことになります。
日本時間の24日午後11時すぎ、インターネットの動画サイトに、イスラム過激派組織「イスラム国」とみられる組織に拘束された湯川遥菜氏とみられる男性の写真を持った後藤健二氏の画像が投稿されました。
これを受けて、政府は25日午前1時すぎから、総理大臣官邸で安倍総理大臣や菅官房長官、それに岸田外務大臣らが出席して関係閣僚会議を開きました。
この中で、安倍総理大臣は「湯川さんが殺害されたとみられる写真が配信され、ご家族の心痛は察するにあまりある。ことばもない。このようなテロ行為は言語道断で、許し難い暴挙で、強い憤りを覚える。断固、非難する」と述べました。
そのうえで、安倍総理大臣は「残る1人の日本人に危害を加えないよう、そして直ちに解放するよう強く要求する。政府としても、関係閣僚の協力を得て、あらゆるチャンネル、ルートを最大限生かしながら全力を尽くす所存だ」と述べました。
そして、安倍総理大臣は「わが国は、引き続き、テロに屈することなく、世界の国々と協力し、国際社会におけるテロへの取り組みに積極的に貢献していく。関係閣僚にあっては、強いリーダーシップを発揮して、正確な情報収集と集約に力を入れること。人命第一に迅速な解決に全力で取り組むこと、関係各国との連携を強化し、国の内外の日本人の安全に万全を期すことをお願いする」と述べ、各閣僚に指示しました。
そのうえで、「われわれは、後藤健二氏とほかのすべての人質を直ちに解放するよう改めて求める」としています。そして、「アメリカは同盟国、日本と協力しており、遠く離れた地域の平和と発展への日本の貢献を支持している。犯人を裁きにかけるため共に取り組むとともに、『イスラム国』を弱体化させ、最終的には壊滅させるため、断固とした行動を取り続ける」としています。
また、ケリー国務長官も声明を発表し、「アメリカは引き続き日本を支援し、緊密に連携していく。テロと過激な思想に対抗するため協力していく」として、日米で結束して対処していく考えを強調しました。
「イスラム国」が後藤さんと引き換えに解放を要求しているリシャウィ死刑囚を巡ってヨルダンでは、去年、「イスラム国」に拘束されたヨルダン軍のパイロットと交換で釈放する案が地元のメディアや識者の間で浮上していました。
ヨルダン軍パイロットのムアーズ・カサースベ氏は去年12月、F16戦闘機の飛行中に「イスラム国」が支配するシリア北部のラッカ近郊に墜落しイスラム国に拘束されました。
この直後からヨルダンでは、ソーシャルメディアなどでヨルダンの王妃など大勢の人が参加して「私たちは皆、ムアーズだ」と呼びかける運動が始まるなど、ムアーズ氏の解放を強く求める世論が高まりました。
その後、アメリカ軍とヨルダン軍の特殊部隊は救出作戦を試みましたが、作戦は失敗に終わり、ヨルダン国内ではムアーズ氏を取り戻す次の手段としてリシャウィ死刑囚と交換する案が地元のメディアや識者の間で浮上していました。
このため日本人の後藤さんの解放のためだけにリシャウィ死刑囚を釈放することには、ヨルダンの世論の反発も予想され、ヨルダン政府に協力を要請している日本政府としても難しい対応を迫られています。