■体裁=四六判・上製・カバー・394頁
■定価(本体 3,000円 + 税)
365夜『ガリア戦記』ユリウス・カエサル|松岡正剛の千夜千冊
その理由はいまでは確定すべくもないが、おそらくはキケロが「裸体であり純粋である」と褒めた文体にあったとおもう。
それを小林が「近頃、珍しく理想的な文学鑑賞」とみなしたことは、40歳になっていた小林がそれまで読まされてきた凡百の文学主張にあきあきしていたときの感想だろうとおもっていたが、さきほど久々にページを繰ってみたところ、それほど大袈裟な感想でもないと感じた。和訳ではあるものの、やはり文体にキレがある。
これはカエサルが偶然に書いたものではない。それは、カエサル自身がこんなふうに言っているところを知って判然とした。「文章は、用いる言葉の選択で決まる。日常使われない言葉や仲間うちでしか通用しない表現は、船が暗礁を避けるのと同じで、避けなければならない」。