日経新聞が報じた安倍晋三首相のヘアカット事情に美容師業界が動揺 - ライブドアニュース
根拠とされるのは、厚生省環境衛生局が1978年12月に各都道府県知事あてに出した「理容師法及び美容師法の運用について」という通知だ。その「2の(2)」には「美容師の行うカッティングについて」という項目があり、こう書いてある。
<美容師が、コールドパーマネントウエーブ等の行為に伴う美容行為の一環として、カッティングを行うことは、その対象の性別の如何を問わず差し支えないこと。また、女性に対するカッティングは、コールドパーマネントウエーブ等の行為との関連の有無にかかわらず行って差し支えないこと。しかし、これ以外のカッティングは行ってはならないこと>
ちょっとわかり辛い書き方だが、要するに「美容師は、女性のカットは無条件にしていいが、男性については、ただカットだけをするのはいけない」ということだ。
「美容所での男性のヘアカットを一律で禁じているのではなく、『パーマ等の行為に伴う美容行為の一環として』なら認めています。ただし、男性の『カットだけ』という行為は、本来的には理容所でおこなわれる行為と想定しており、美容所でおこなってよいという整理はしていません」(厚生労働省健康局生活衛生課)
「美容室業界では男性客が年々、増えていて、多いサロンでは3割くらいが男性客だと聞いています。理容師さんは刈り上げや髪の毛の『面』を作る技術は高いと思います。でも、最近の流行は、メンズも柔らかさや自然さを出すことです。この技術は美容師のほうが高い。ガールフレンドや奥様に勧められて、来店する男性客も多いんですよ」
しかし、こうした声について、先の厚労省健康局生活衛生課の担当者は「美容師が通知にそった運用をしていない実態があるならば、そもそも問題です。保健所の指導が行き届いていない可能性があります」と話しているのだ。
では、保健所の指導はどうなっているのだろう。東京都の保健所担当にたずねてみると、こんな答えが返ってきた。
「その通知は認識しています。しかし、この通知の内容をもって、通知通りに指導をしているかと言われれば、現状はしておりません。実態に照らすと、通知書通りの指導をすることは難しい現状があります。地方自治体法では、国からの通知や通達を『技術的助言』という位置づけに置いており、どう対応するかは自治体の判断という運用が、浸透しているものと考えています」(東京都福祉保健局健康安全部)
自治体ごとに対応は異なる。東京都とは対照的に、高知市保健所は積極的な指導をおこなっている。
「高知市では、国が定めている基準にしたがって、法令遵守をしていただきたいと県の美容師組合に要請したり、折にふれて指導をおこなっております。市民の方から通報があったり、定期的な監視指導の際に『男性カット』のようなメニューがあれば、内容をチェックすることになります。男性の美容室利用が増えているからといっても、国が実態をみて、通知上で容認しないかぎり、市として認めることはありません」(高知市保健所生活食品課)