野口悠紀雄『超』整理法は2015年でも感動しまくる名著だった : blog@sutougen
この本は、現在でも紙の資料整理の主流に君臨する『内容による分類』を否定するところから始まる。
必要な情報が、失われず、なんとか出てくれば、それでよい。完璧で美しいシステムを作る必要はない。目的は検索であり、分類整理はそのための手段の一つにすぎないことを認識しなければならい。
電子媒体のファイルについても、内容による分類、整理はまったく必要ない。むしり、「しないほうがよい」。作ったすべてのファイルを、内容とは無関係に、まったく機械的に、一つのフロッピーに作成時間順に入れていく。そして、検索はコンピュータにまかせる。実際、すでに述べたように、探すのはコンピュータがもっとも得意とするところである。
楽天ブックス|著者インタビュー 野口悠紀雄さん『超「超」整理法?知的生産力を飛躍的に拡大させるセオリー?』
−−『「超」整理法』で提唱された“押し出しファイリング法”を長年使わせていただいているのですが、あれ以上の整理法はないですね。*“押し出しファイリング法” =使った順にファイルを並べれば、使わないファイルが右に押し出されるという、時間軸を利用した方法が最適です。
−−大きな話題となった『「超」整理法』から15年。今、なぜ『超「超」整理法』として、新たに書き直そうと思われたのでしょう?
野口さん 時代が大きく変わってきていると感じたことが一番の理由です。押し出しファイリング法は今でも使っていますが、それで整理しなくてはならないものが減ってきている。つまり、自分が扱う情報のほとんどが電子的なものになっているとは薄々感じていました。それがGメールを使い始めたら、ある時、非常に能率的なデジタル・オフィスがいつのまにかできていると気付いた。
−−具体的にはどのようなことですか?
野口さん たとえばインタビューを受けた時、以前に書いた記事を参考資料にしたいと思ったことがありました。ところが原稿は自宅のPCに保存してある。だから残念だけど使えないと思った時、ふと、原稿は出版社にメールで送っているので、Gメールのログが自分の原稿のデーターベースになっているはずだと気付いた。早速検索して、すぐにその原稿を取り出すことができました。
もうひとつ、雑誌の連載の原稿を書きながら、前号の内容を使いたいと思ったことがありました。原稿はPCのファイルに残っていますが、第○号と付けていないことがあって、探し出すのに苦労する場合が多いのです。しかし、校正用の原稿はPFDで出版社からのメールで受け取っているから、Gメールのログを見て、PDFを開ければ必要な情報が得られる。掲載誌をコピーしなくても、自然にログに資料が蓄積されていた。デジタル・オフィスが出来ていたというわけです。
−−そもそも『「超」整理法』について、考え始めたきっかけとは?
野口さん 扱わなければならない書類がたくさんあって、そうせざるを得なかったからです。ただ、私の言う「整理法」というのは、整理を上手くやるための方法ではないのです。それを誤解して、『「超」整理法』の著者にしては、研究室が乱雑ですねと言われる(笑)。『「超」整理法』というのは、いかにして、整理なんていうばかげた作業をしないで済ませるか、そのための方法なのです。押し出しファイリング法にしても、ひたすら並べているだけですから。必要な仕事に集中するには、整理のようなことに時間を使っていられない。
−−14年前に発案された『「超」整理手帳』シリーズも大変人気です。『図解「超」手帳法』では、デジタル・オフィスの時代になっても、情報のインプットとアウトプットは紙がいいと述べられていますが。
野口さん それが如実にわかるのが手帳です。スケジュールをPCのカレンダーに入力するには時間がかかる。だからメモを取って後で入力しようとすると、忘れたり、なくしたりする。その危険を避けるには、手帳に書くのが一番簡単で確実な方法です。アウトプット、つまり予定を確認する時もPCだと手間がかかる。手帳にかぎらず、情報のインプットとアウトプットは、紙を使うほうが圧倒的に早い。一方で保存や検索や通信はデジタルのほうが絶対的に効率的。紙とデジタルをいかに共存させるかが、これからの課題ですね。
今、ほとんどの書類はA4サイズなので、プリントした場合、手帳に収まらないでしょう。A4サイズの書類が入るのは唯一「超整理手帳」だけだと思います。講談社のMouRa(講談社のオリジナルコンテンツを発信するポータルサイト/http://moura.jp/index.html)では、ITとの親和性を考慮したフォルダーなどを無料のサービスとして提供しています。
「超」整理手帳の野口悠紀雄氏に聞く:Googleで変わった――「超」整理手帳と野口悠紀雄のクラウド仕事法- ITmedia エンタープライズ
――紙とクラウドを使う比率はどうでしょう? クラウドを使う時間が多くなった印象を受けますが。
野口氏 いいえ、逆です。紙に手書きする頻度が明らかに多くなりました。スケジュールも超整理手帳に書いて予定を立てますし、メモは紙に書きます。ただし保存先は全てクラウドです。先ほども言ったようにスマートフォンで撮影したものをクラウドに保存します。クラウドを活用したデジタルオフィスは“ペーパーレスオフィス”ではありません。“ペーパーフルオフィス”ですね。
――Gmailの下書きと紙に手書きでいうと、どちらの頻度が多いでしょうか?
野口氏 両方同じくらいですね。ただし初めから内容をGmailの下書きに書くことはありません。アイデアを思い付いたタイミングで記録する方法としては、紙が一番だからです。典型的な例では散歩中にアイデアが思い付いた時など。紙のメモ帳にその場で記録できます。スマートフォンもありますが、私の場合はフリック入力があまり早くないので、やはり紙に手書きですね。
――クラウドを使うことで、手書きへの意識が高まったということですね。
野口氏 そうです。全てクラウドに保存できるので。