アングル:萬歳JA全中会長が辞任、歩み始めた農政改革 | Reuters
同日午後に開かれた記者会見で会長は、農協改革法案が3日に閣議徹底されたことを一つの区切りとし「新しい全中のあり方を、新会長の下で作っていただきたい」と述べ、前向きな会長交代であることを強調した。
7日には安倍晋三首相と官邸で会談し、「政府の農協改革と同じ方向で自己改革を進める」と述べるなど、改革の方向性に異議がないことを演出。しかしもともと、全中は農協改革には強硬に反対する姿勢を示していた。
会長辞任について、キヤノングローバル戦略研究所の山下一仁氏は「農協改革をめぐり、責任を取ったということだろう」とみる。「全中は、監査権限が重要であるから全中を農協法の枠の中に残すべき、と主張してきたのに、その重要な監査権限を奪われることになったのだから実質的に敗北」と指摘する。
ある農業団体関係者も「組織を今の形のままで維持すべきだと主張してきた全中が、社団法人化で譲歩せざるをえなかったことで、会長は敗軍の将として責任を取った」との見方を示した。
萬歳会長は9日の会見で、時折涙を浮かべながら全中会長としての仕事を振り返り、それでも「任期途中の辞任は悔しくないか」との質問に「そんなもの感じない」と言葉だけは強気を押し通した。
農協改革をめぐる政府・自民党と全中の協議は2月9日に決着。全中の地域農協に対する監査・指導権限を廃止、2019年9月までに全中を農協法の枠から外し、一般社団法人に転換することとなった。
そのかわり、農協に農家でない「准組合員」が大量に加盟していることを問題視し、准組合員の利用を規制しようとした政府・自民党の主張については法案化が見送られた。