アメリカ政府に強力な交渉権限を与える法案は、TPPの参加国が詰めの交渉に入るために欠かせないとされ、23日、通商政策を扱う議会下院の歳入委員会が法案の審議を行いました。
冒頭、ライアン委員長は「来週、日本の安倍総理大臣がアメリカを訪問するが、各国政府も思い切った交渉に臨むため法案可決を待っている」と述べ、速やかな審議を呼びかけました。
そして審議、採決の結果、賛成25、反対13で法案は可決されました。議会上院の委員会も22日にすでに法案を可決し、今後、それぞれ本会議で審議されることになります。
法案を巡っては、与党・民主党内に、TPPで輸入品が増え雇用が失われるという反対が多く、共和党の一部もオバマ大統領の権限強化は認められないと反対しています。
通商政策に詳しいワシントンのシンクタンクCSIS=戦略国際問題研究所のマシュー・グッドマン上級アドバイザーは今後の審議について、「政治的に難しい問題で、議会下院では20から25ほど賛成票が足りていない。ホワイトハウスは賛成を集めるのに懸命になっている」と述べ、現時点では法案可決の見通しは立っていないと分析しています。
米下院歳入委がTPA法案を可決、本会議通過は不透明 | Reuters
米下院歳入委員会は、貿易促進権限(TPA)法案を可決した。環太平洋経済連携協定(TPP)に向け必要な同法案は25対13での賛成多数で可決、今後は下院本会議での審議に移る。
下院歳入委の採決で賛成票を投じたのは、民主党メンバー15人のうち2人にとどまった。民主党内ではTPPは雇用や環境に悪影響を及ぼすと慎重論が強く、オバマ政権は共和党の支持に頼らざるを得ない。
TPA法案は22日に上院財政委員会を通過している。上下院ともに、法案が本会議で可決されるかどうか、現時点では不透明な情勢だ。
下院委では、TPAに慎重な一部議員が、貿易相手国の為替操作に対して制裁を可能にする修正案を提出したが、24対14で否決した。
オバマ米大統領、民主党内のTPP懐疑派の批判に反撃 | Reuters
TPPをめぐっては、労働組合や環境団体のほか、エリザベス・ウォーレン上院議員ら民主党の有力議員が、雇用の国外流出につながるとして反対に傾いている。
大統領は、自身の元選挙キャンペーンチームによって形成された支持団体に対し「TPPが中間層の家庭にとってよくないという人は何も分かっていない。私は任期中ずっと中間層の支援に取り組んできた」と指摘。「私を2度(大統領に)選んだのは商工会議所ではなく、中間層の人々だ」と述べた。
さらに大統領は、自身は医療保険制度の拡充や自動車セクターの救済、金融規制改革などに取り組んでおり、中間層の雇用に打撃となる貿易協定に署名すると考えるのは非論理的だと訴えた。