ブログ更新。カントを学び、ライプニッツに関する調査に赴いた彼女は、20世紀を代表する中世哲学史家になった。 「アンネリーゼ・マイアーからみた中世哲学」http://d.hatena.ne.jp/nikubeta/20150511/p1
アンネリーゼ・マイアーからみた中世哲学 Perler, "Maier and the Study of Medieval Philosophy Today" - オシテオサレテ
一人の偉大な学者を糸口に、西洋中世哲学研究の過去と現在、そしてこれからを見通そうとする論考である。その整理の細部に異論はあるかもしれない。しかし一つの見方が、極めて明晰な論述によって提示されており、一読の価値はまちがいなくある。
カントについての論文で学位を取得していたアンネリーゼ・マイアーは、イタリアに残るライプニッツ書簡を調査するためにローマに派遣された。1936年のことである。だが彼女はライプニッツ研究者にも、またカント研究者にもなることはなかった。彼女が終生の主題としたのは中世哲学であり、ヴァチカン図書館にある手稿を徹底的に読みこんでいくことになる。その成果は5巻からなる一連の後期スコラ自然哲学研究(1949-58)と、三冊組の論文集(1964-67)にまとめられている。
マイアーは自然哲学の研究に専念した。
彼女が行おうとしたのは、スコラ学者の世界理解を彼らが置かれていた文脈によって正確に把握することであった。よって彼女にとってスコラ学者の自然理解が正しいか間違っているかは問題ではなかった。「興味深いのは知り方(modus sciendi)であり、知識(scientia)ではない」。
関心を14世紀に向けた点で新しかった。
彼女の研究は初期近代の研究にも影響を与えた。Daniel GarberやDennis Des Cheneの研究は初期近代の新たな自然に関する理論を理解するためには、中世理論がいかに組みかえられたかを知る必要があるとして、スコラの自然理解に多くの紙幅を割いている。