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アングル:輸出・生産回復に慎重論、アジア停滞や車減産足かせに | Reuters

4月の貿易統計を受けて、輸出・生産の先行きに慎重論が高まっている。円安で生産の国内回帰はある程度出てきたものの、肝心の需要はアジアを中心に海外経済の減速により伸び悩んでいる。ウエートの大きい自動車の生産計画が4、5月ともに慎重化していることも生産全体の先行きに不透明感を与えており、国内景気の先行きはしばらく加速感に欠ける可能性もありそうだ。

4月の実質輸出(日銀発表)は前月比1.5%の増加となった。昨年10─12月には前期比4%弱の力強い回復を示していたが、1─3月に1%の伸びに鈍化。4月も強い伸びとは言えない結果になった。


中でも目立つのは、アジア向けの減速。内閣府公表の輸出数量では、4月のアジア向けは前月比5%の減少となっている。


貿易活動が停滞しているのは、日本だけではないようだ。JPモルガン証券では、25日付のリポートで新興国経済の急激な減速を主因として、世界の製造業の生産が明確に増加基調に転換するまでには、時間がかかるだろうと予測。足元では、メーカーが生産を抑制しているにもかかわらず、在庫が積み上がっている模様だとみている。


輸出のこうした伸び悩みは、国内生産活動にも影を落としそうだ。日銀は25日発表した5月の金融経済月報で、4─6月の生産の動きについて「いったん横ばい圏内の動きとなる」との見通しを示した。特に自動車などの輸送機械は「軽自動車を中心に減産に転じる」と予想している。


本来ならば、円安の進行で製造業の国内回帰の動きが広がっていることから、輸出の数量増加につながるはずだが、今のところ輸出の伸びに加速感は見られない。


経済産業省発表の製造工業生産能力指数は、昨年10─12月に下げ止まりが確認できる。はん用機械や電子部品など、輸出型産業では、長らく低下傾向にあった生産能力指数が底打ちから上昇に転じていることが読み取れる。


パナソニック(6752.T: 株価, ニュース, レポート)やダイキン工業(6367.T: 株価, ニュース, レポート)などで国内工場への生産移管の報道があるほか、トヨタ(7203.T: 株価, ニュース, レポート)をはじめ、ホンダ(7267.T: 株価, ニュース, レポート)、日産自動車(7201.T: 株価, ニュース, レポート)やスズキ(7269.T: 株価, ニュース, レポート)も円安を背景に海外工場での生産の一部を国内に回帰させると報道されている。


しかし、実際に国内での生産が輸出増につながるにはタイムラグがあるほか、新興国経済の需要自体が停滞していることも影響していると見られる。ナカニ自動車産業リサーチの中西孝樹代表は、海外向け自動車生産の国内回帰は、2016年度にかけて年間30万台程度にとどまるとみている。

こうした中、足元における自動車の輸出と生産動向に対し、警戒感を強める声も出始めた。


4月の乗用車輸出は台数ベースで前年より0.6%減少。好調と言われる米国向けでもわずか0.2%の伸びにとどまっている。


SMBC日興証券・チーフエコノミストの牧野潤一氏は「米国の新車販売台数は1650万台と潜在需要の1600万台を上回っており、頭打ちになっている」と指摘する。


さらに減速が特に目立つのがアジア向けの4.2%減少、中国向けでは50%を超える減少幅だ。


同時に乗用車の内需も弱く、自動車工業会によると2015年度の国内自動車需要は前年度比5.4%減の499万台にとどまる。


特に軽自動車は、保有者に対して毎年かかる税金が4月から年1万0800円へと1.5倍に増えたのが直撃し、12.4%減の190万台まで落ち込む見通しだ。


普通自動車の海外生産拡大により、自動車の国内生産に占める軽自動車のウェートは4分の1程度と大きく、軽自動車の不振は国内生産への影響が大きい。


自動車は生産全体に占めるウエートが約2割と大きく、産業のすそ野が広いため、自動車分野における生産・輸出の「伸びの鈍さ」は、国内生産全体の基調に暗い影を投げかける構図になっている。


ただ、この先の動向は、業種によりまちまちだ。鉱工業生産・予測では、主要業種である一般機械や電子部品、電機では海外からの需要増加を背景に4、5月ともにしっかりとした生産増加が見込まれている。


他方、落ち込みが目立つのが、やはり自動車とその関連業種である鉄鋼や非鉄金属など。輸送機械の生産は、4月前月比3.9%減、5月同5.1%減と大幅な減少が見込まれている。


自動車業界向け鋼材も、3月の受注が東日本大震災後以来の低水準に落ち込んだ。

輸出や生産に不安を抱える中、製造業の回復にはしばらく時間がかかりそうだ。1─3月期実質国内総生産(GDP)で、前期比0.6%のうち、内訳をみると在庫の寄与が0.5%と最も大きかったことからも、在庫調整による4─6月期の生産下押し圧力が懸念されている。


4─6月の景気が回復するには、非製造業の高い伸びが欠かせない。ロイター短観でも4月以降は小売りや卸、不動産などを中心に非製造業の景況感が急伸している。


バークレイズ証券では4─6月期GDPについて、在庫増加の反動を主因に従来の年率2%成長から同1.3%に下方修正したが、個人消費や住宅投資の伸びに期待している。


消費税8%への増税の影響が一巡した4月以降の景気が底堅い回復を見せるには、外需の回復が待たれるが、中国をはじめ新興国経済の停滞が晴れるまでは、輸出・生産が緩慢な動きにとどまる可能性がありそうだ。