日銀短観、企業心理が消費増税前に回復 緩和観測は後退 | Reuters
日銀が1日発表した6月全国企業短期経済観測調査(短観)では、大企業製造業の業況判断DIがプラス15、同非製造業がプラス23となり、企業マインドは消費税率引き上げ前の水準近くまで回復している。設備投資計画も強めとなった。いずれも事前予想を上回る内容で、市場では日銀による追加緩和観測が一段と後退している。
業況判断DIは大企業製造業が3四半期ぶり、同非製造業が3四半期連続でそれぞれ改善し、いずれも消費税率引き上げ前となる2014年3月調査以来の水準となった。事前の市場予想では、大企業製造業でプラス12、非製造業でプラス22が見込まれていたが、いずれもこれを上回った。先行きは製造業がプラス16と小幅改善となる一方、非製造業はプラス21と小幅の悪化を見込まれている。
<円安・設備投資がけん引、インバウンド需要も>
製造業のマインド改善をけん引したのは円安進行による企業収益の改善や、設備投資需要の強まり。大企業製造業の15年度の想定為替レートは1ドル115.62円と6月調査では2003年以来の円安水準となり、同120円台前半で推移している現状からは依然として保守的。収益の上振れ余地も見込まれる。
設備投資計画も堅調で、大企業全産業の15年度の設備投資計画は前年比9.3%増となり、6月調査では06年以来の高水準。日銀では、設備投資計画について「過去の修正パターンと比べて強め」(調査統計局幹部)としており、「能力増強投資や維持更新投資の上積みもみられている」(同)という。
業種別のDIをみても「設備関連業種が堅調」(同)で、生産用機械(プラス37)と業務用機械(プラス22)は調査開始以来、最大のプラス幅となっている。
非製造業のマインドも引き続き高水準を維持。賃上げに伴う今後の消費改善が期待されるほか、訪日外国人によるインバウンド消費、原油安に伴うエネルギーコストの改善などが下支えになっている。
大企業の宿泊・飲食サービスはインバウンド消費や国内旅行増を反映してプラス26と調査開始以来のプラス幅に改善。小売もプラス22となり、前回から17ポイント改善した。また、燃料コストの低下で運輸・郵便が、良好な需要を反映して不動産などもマインド改善が続いている。
<景気の前向き循環に強まり、海外リスクを意識>
良好な短観を受け、市場では日銀による追加緩和観測が後退している。
SMBCフレンド証券・チーフマーケットエコノミストの岩下真理氏は設備投資の大幅な上方修正に驚いたとし、「円安効果や国内での生産回帰など要因が影響したとみられるが、老朽設備の更新需要に加えて、新規の設備投資という本格的な動きが出てきたのだろう」と分析。そのうえで「前向きな循環メカニズムが働いているという点で、日銀としても自信を深めたのではないか」とみる。
マネックス証券・シニアストラテジストの山本雅文氏も先行きの金融政策について「市場の追加緩和期待はさらに遠のき、年内追加緩和の可能性は、一段と後退したとみている」と指摘する。
ただ、足元の金融市場はギリシャ情勢の緊迫化などを背景に神経質な取り引きが続いている。山本氏によると、追加緩和観測の後退とギリシャ問題などを背景に為替市場では「円高リスクが高まっている」という。
短観では、海外での製商品需給判断が横ばいにとどまっており、引き続き海外経済と国際金融市場の動向が、企業にとっても先行きリスクとして意識されそうだ。
短観(6月概要、要旨) http://twme.jp/boj/01Uy
Tankan (June): Summary and Outline http://twme.jp/boj/01Uv
焦点:短観が裏付けた企業の設備投資増強とROE改善 | Reuters
6月日銀短観からわかったのは、国内企業の設備投資が想定以上に力強いことだ。円安を起点にした企業の利益率上昇も鮮明になり、政府が成長戦略で後押しした株主資本利益率(ROE)の改善が進んでいる姿が浮かび上がった。