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安保法制めぐりジブリ高畑勲監督が静かに警告「日本人の体質は戦前から何も変わっていない」|LITERA/リテラ 本と雑誌の知を再発見

 今月半ばにも与党が強行採決に持ち込むと見られる安保法制関連法案。これを「違憲」とする多数の憲法学者を始め、文筆家、役者、芸人、アーティストと様々な方面から「反対」の声が上がっているが、こうした著名人のなかでとりわけ地道に活動に取り組んでいるのが、スタジオジブリ高畑勲監督だろう。

 高畑監督は語る。日中戦争から太平洋戦争への移行期、日本のなかには「絶対的な国力で上回るアメリカと戦争をしても勝つ見込みはない」と考える人が大勢いた。一部の軍人だけではなく、アメリカ文化を好む若者の間でもそう言われていたという。しかし、そんな彼らも、開戦するやいなや日本の戦争を否定しなくなった。ゆえに、高畑監督は「この戦争初期の人々の体質が、戦後に変わったと言えるのか」「一度戦争のできる国になったら、必ず国民もズルズルといってしまう」と釘をさすのである。


「それは、論理的に考えて、当然だということをわかってほしい。日本は島国で、みんな仲良くやっていきたい。『空気を読み』ながら。そういう人間たちはですね、国が戦争に向かい始めたら、『もう勝ってもらうしかないじゃないか!』となるんです。わかりますか? 負けちゃったら大変ですよ。敗戦国としてひどい目にあう。だから『前は勝てっこないなんて言っていたけれど、もう勝ってもらうしかない』となるんです」


 つまり、高畑監督のいう“ズルズル体質”とは政府だけの問題ではないのだ。むしろ、いま戦争への道に反対する人々に対してこそ投げかけているのである。
「だから、われわれ自身が胸に問うてほしいのです。戦争になったら、やっぱりみなさん、日本国を支持するんじゃないですか? それで、支持しない人を非国民って言うんじゃないですか?」

 戦禍の悲惨さは、彼自身が身をもって知っている。それでもなお、こうした体験を語ったとしても、戦争を止める力にはなりえないのだと言う。なぜならば、どれだけ戦争被害の苦しみを表現しようが、安倍晋三のような政治家は必ず「二度と悲劇を繰り返さないために、自衛力を強化する」と主張するからだ。戦争体験を描き、語ることは人々の情緒に訴えかけるが、しかし同時に、為政者によって「そんなひどい目にはあいたくない」という切実な思いを利用され、「自衛のための戦争」に向かわされてしまう。


 しかも、日本は戦前からの“ズルズル体質”を受け継いでいる。ゆえに、ひとたび「戦争のできる国」になると、政府が命令するまでもなく、人々自らが打って一丸となる。だからこそ、高畑監督は“歯止め”としての憲法9条の必要性を強く訴えかけるのだ。