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新国立:「費用拡大、承知せず」安藤審査委員長が会見 - 毎日新聞

 巨大な2本の弓状のキール構造で開閉式屋根を支えるデザインの選定を安藤氏は改めて「大胆な建築構造が表れたアリーナ空間の高揚感、臨場感、一体感が際立っていた」と説明した。


 当時は1300億円の予算を前提に選定。だが技術的に困難な構造である上、資材や人件費の高騰を受け、総工費は昨年5月の基本設計時の1625億円から2520億円に大幅に膨らんだ。しかし、安藤氏は「設計チーム、建設チームが知恵を可能な限り出し合い一丸となって取り組むことで、未来に受け継がれる新国立競技場が完成することを切に願っている」と説明した。

新国立:経緯に関する説明文…安藤審査委員長が配布 - 毎日新聞

 新国立競技場改築について、国際デザイン競技審査委員長として、ザハ・ハディド氏の提案を選んだ審査の経緯をここに記します。


 老朽化した国立競技場の改築計画は、国家プロジェクトとしてスタートしました。「1300億円の予算」、「神宮外苑の敷地」、オリンピック開催に求められる「8万人の収容規模」、スポーツに加えコンサートなどの文化イベントを可能とする「可動屋根」といった、これまでのオリンピックスタジアムにはない複雑な要求が前提条件としてありました。さらに2019年ラグビーワールドカップを見据えたタイトなスケジュールが求められました。


 その基本デザインのアイデア選定は、2020年オリンピック・パラリンピックの招致のためのアピールになるよう、世界に開かれた日本のイメージを発信する国際デザイン競技として行うことが、2012年7月に決まりました。


 2013年1月のオリンピック招致ファイル提出に間に合わせるため、短い準備期間での国際デザイン競技開催となり、参加資格は国家プロジェクトを遂行可能な実績のある建築家になりましたが、世界から46作品が集まりました。


 デザイン競技の審査は、10名の審査委員による審査委員会を組織して行われ、歴史・都市計画・建築計画・設備計画・構造計画といった建築の専門分野の方々と、スポーツ利用、文化利用に係る方々、国際デザイン競技の主催者である日本スポーツ振興センターの代表者が参加し、私が審査委員長を務めました。グローバルな視点の審査委員として、世界的に著名で実績がある海外の建築家2名も参加しました。


 まずはじめに、審査委員会の下に設けられた10名の建築分野の専門家からなる技術調査委員会で、機能性、環境配慮、構造計画、事業費等について、実現可能性を検証しました。その後、2段階の審査で、デザイン競技の要件であった未来を示すデザイン性、技術的なチャレンジ、スポーツ・イベントの際の機能性、施設建設の実現性等の観点から詳細にわたり議論を行いました。2012年11月の2次審査では、審査員による投票を行いました。上位作品については票が分かれ、最後まで激しい議論が交わされました。その結果、委員会の総意として、ザハ・ハディド氏の案が選ばれました。


 審査で選ばれたザハ・ハディド氏の提案は、スポーツの躍動感を思わせる、流線型の斬新なデザインでした。きわめてインパクトのある形態ですが、背後には構造と内部の空間表現の見事な一致があり、都市空間とのつながりにおいても、シンプルで力強いアイデアが示されていました。とりわけ大胆な建築構造がそのまま表れたアリーナ空間の高揚感、臨場感、一体感は際だったものがありました。


 一方で、ザハ・ハディド氏の案にはいくつかの課題がありました。技術的な難しさについては、日本の技術力を結集することにより実現できるものと考えられました。コストについては、ザハ・ハディド氏と日本の設計チームによる次の設計段階で、調整が可能なものと考えられました。


 最終的に、世界に日本の先進性を発信し、優れた日本の技術をアピールできるデザインを高く評価し、ザハ・ハディド案を最優秀賞にする結論に達しました。実際、その力強いデザインは、2020年オリンピック・パラリンピック招致において原動力の一つとなりました。


 国際デザイン競技審査委員会の実質的な関わりはここで終了し、設計チームによる作業に移行しました。


 発注者である日本スポーツ振興センターのもと、技術提案プロポーザルによって日建設計・日本設計・梓設計・アラップが設計チームとして選ばれました。2013年6月に設計作業が始まり、あらゆる課題について検討が行われ、2014年5月に基本設計まで完了しました。この時点で、当初のデザイン競技時の予算1300億円に対し、基本設計に基づく概算工事費は1625億円と発表されました。この額ならばさらに実施設計段階でコストを抑える調整を行っていくことで実現可能と認識しました。


 基本設計により1625億円で実現可能だとの工事費が提出され、事業者による確認がなされた後、消費税増税と物価上昇にともなう工事費の上昇分は理解できますが、それ以外の大幅なコストアップにつながった項目の詳細について、また、基本設計以降の実施設計における設計プロセスについては承知しておりません。さらなる説明が求められていると思います。


 そして発注者である日本スポーツ振興センターの強いリーダーシップのもと、設計チーム、建設チームが、さらなる知恵を可能な限り出し合い一丸となって取り組むことで、最善の結果が導かれ、未来に受けつがれるべき新国立競技場が完成することを切に願っています。


2015年7月16日 安藤忠雄

新国立:安藤忠雄氏 記者会見の一問一答 - 毎日新聞

 安藤氏 こんにちは。安藤忠雄といいます。(7日に開かれた将来構想)有識者会議に出なかったから「すべて安藤さんの責任や」というのは「ちょっと分からないな」と思っておりました。私はその日、大阪で同じ時間に講演会があったので、東京での会議には出られなかった。(記者の)皆さんの意見はだいたい分かるので、何か聞きたいことがあったらまとめて聞いてくださいよ。


 −−政府が見直しを検討しているが、安藤さんはどのように進めていくのがベストと考えているか?


 −−ここまでの報道をどのような思いで見ていたか?


 −−コンペの際は1300億円という目安があったが、(採用された)ザハ・ハディド氏の案は専門家の目から見たら、収まらないのは明らかという声が多い。(2012年11月に)決まった時点でその点はどのように考えていたのか?


◇我々の仕事は2012年11月まで


 安藤氏 有識者会議に欠席したのは申し訳ないと思っています。大阪にいるということもあり、体調が良くなかった。去年に大手術をして膵臓(すいぞう)と脾臓(ひぞう)を全部取りました。今、よう生きてるなと思いますけどね。そういうこともあって東京に来られず、講演会もあった。申し訳ないなと思っています。


 (コストに関する批判に関しては)どうも、どこかで誤解が生じていると思います。私たちが頼まれたのは(2012年11月の)デザイン案の選定までなんですね。


 「1300億円でいけると思っていたのか」という質問についてですが、全部の設計者に値段は出してもらっています。たとえば、私たちが3000万円の家を作るとすると、基本設計で「安藤さん、3700万円ぐらいかかるよ」と言われることもある。それを「3200万ぐらいにならんかな」などと調整しながら、できるだけ自分たちの予算に持っていきます。これが普通なんです。


 (昨年5月に完了した)基本設計の後で出た「1625億」というのが、我々のところに聞こえてきました。「聞こえてきた」というだけで、教えてもらったわけじゃないんです。なぜならば、我々の仕事は(デザイン案の選定が終わった「2012年11月」をパネル上で指さしながら)ここまでですから。


◇2520億円「もっと下がるところないの?」


 安藤氏 今、「値段が高いから、安藤さんに責任をなすりつけたら、ええんやないですか」と思われていますが、我々、選んだ責任はあります。物価の上昇もあるから、「1700億〜1800億円になるかも」とは思っていました。全然(かけ離れた)2520億円になって、私も「もっと下がるところないの?」と聞きたい。私が聞いても「それぐらいかかります」で、何も言うてくれないからね。それで2520億円を安藤さんが決めたと言われても、私は総理大臣じゃないからね。どこか飛び越えていると思いませんか? 1人の国民として「なんとかならんかな」と思っています。


 ただ、ザハさんという人間を選んでいますから、国際協約としてはこの方を外すわけにはいきません。2016年(に東京五輪を招致しようとした時)は(ブラジル・リオデャネイロに)勝てませんでした。ザハさんの案はダイナミックです。流線型で、斬新なデザインで、何よりもシンボリックでした。「(2020年の招致活動は)勝ってほしいな」という思いで、あの案を選んだのかもしれません。(事業主体の)日本スポーツ振興センターの方々や、みんなで選びました。


 ザハさんの案を「これからどうするんだ?」ということですけど、1人の人間として言えば、「できたらザハさんのアイデアを残してほしいな」と思いますね。徹底的に討論をして、どういうふうに決着するかは分かりませんが、(議論を)公開して、情報を共有しながらやっていかなあかんと思います。


◇「日本のためになれば」と参加


 安藤氏 「1300億円でいけると思っていたか?」という質問ですが、それが条件でしたけど、私自身はそんなに大きなものを造ったことがないですからね。「(そんなに)要るんだな、すごいな」ということぐらいしか思っていなかった。


 一方で、世界中の人が見る芸術だとも思っていました。この難しい建築工事を日本ならできると思いました。「世界中で他にできるところはなくても、日本ならこれだけの建築ができるのではないか」とも思いました。


 それと「(観客席)8万って多いな」って人はいませんか?(記者に問いかける) でも8万人は決まっているんですよ。で、千駄ケ谷という場所も決まっているんですよ。何十人もいる審査委員の人はこの条件で、「日本のためになればいいな」と思って参加させてもらいました。「あそこでやるのが間違い」という人もいますが、私たちにそれ以外の選択肢はなかったです。その後、景観や交通、環境の問題も出ました。その調整は基本設計のところでやらないといけないんです。材料や工法の問題が出る中でキールアーチの問題が出ました。700億円というの(費用がかかることを)、我々は新聞で知ったんです。1300億円の(目安でデザイン案を決めた)時にもアーチはあったんですよ。今になって急に出てきたわけではないんです。そのことを考えると「もう1回、調整がいるんじゃないか?」と思いますね。もし国民の一人としてお願いできるなら、皆さんと一緒の気持ちですので「調整してほしいな」という気持ちがします。


 こういうことなら日本人の総力を挙げて、ゼネコンも「もうからんでも、日本の国のためだ」といってもらわないと。それが日本のゼネコンのプライドなんじゃないかと思いますね。「もうかるから、どんどんいこう」ではなくて、「日本の誇りのため」ということでやってくれれば、値段もうまくいくんじゃないかと思っていますが。でも、ここまではこないでしょうね。


 皆さんが関心を持たれているのはお金ですよね。東京の五輪ではあるけれど、日本という国の五輪なんです。今回はどういう案になるかということですね。ザハ・ハディドさんを選んだわけですから、その方との協調の中でうまく(値段を)下げていただくといいなと思います。他に質問はありますか?


◇アイデアのコンペ。コスト議論しない


 −−他の審査委員の話を聞くと、コストの議論をほとんどしていないという認識だったのですが、安藤さんはコストの議論は十分だったと考えていますか?


 安藤氏 実際にはアイデアのコンペだったんですね。こんな形でいいなというコンペですから、徹底したコストの議論にはなっていないと思いますよ。図面がきっちりあったわけではないからね。


 −−建築として、どのようなレガシー(遺産)として残ってほしいと思ったのか? どの辺りが安藤さんの目から見てチャレンジング(挑戦的な建築)だったのか?


 安藤氏 とにかく「日本がこの時期にこれを造ったんだ」という気持ちで選べるものがいいんじゃないかと思って、私1人の意見じゃないですが、選びました。それと、かなり個性がある形ですが、今はコンピューターの時代なので、この時代にしかできない建築ってあると思うんです。1964年(東京五輪)と違ってコンピューターで徹底的に解析してできる美しい建築があると思ったんです。実際には審査員の中でも、(意見が)割れていたんですね。みんなで徹底的に打ち合わせて決めました。


◇みんなで徹底的に調整すべし


 −−2520億円かかると分かった今、見直すという考えは?


 安藤氏 基本設計で1625億という数字が出ていたので、私は2520億と聞いたとき、「ええっ、本当?」って思いましたよ。これは調整しないと、いかんでしょう。それが国民の気持ちでしょう。「何、考えとんねん」と。みんなで徹底的に話し合って、(調整)すべきでしょうね。審査委員長としてというよりも、1人の国民としてそう思います。


 −−この問題について「リーダーシップを誰が取っているのか?」という思いを持っている国民は多いと思いますが?


 安藤氏 リーダーシップは要りますね。リーダーが強い思いと力をもって引っ張っていかないといけないと思いますね。それを考えると、「文部科学大臣なのかな? 総理大臣なのかな?」と思いますが、私が決められるわけじゃないですから。


 −−反対している建築家の槙文彦さんや、磯崎新さんへの思いは?


 安藤氏 槙先生は「景観が悪い」と前から言っております。このところはコストについても言っておられます。我々は審査で終わりなので、その辺りを聞いていないんですが……。磯崎さんは「国際協約から言って、選んだザハ氏の案を外すわけにはいかない。そのことをしっかり踏まえて考えよ」と言っています。その点は、私もまったくそう思います。そうじゃないと日本の国際的な信用がなくなります。

建築家・安藤忠雄氏が新国立競技場の総工費2520億円についてコメント - ログミー

http://d.hatena.ne.jp/d1021/20150715#1436957075
http://d.hatena.ne.jp/d1021/20150714#1436870899
http://d.hatena.ne.jp/d1021/20150713#1436784108
http://d.hatena.ne.jp/d1021/20150712#1436697481