中国が南シナ海の南沙（スプラトリー）諸島で浅瀬の埋め立てを行っていることなどに対して国際社会が懸念を強めるなか、政府は２２日、中国が東シナ海でのガス田開発を巡って、２０１３年６月以降、新たに１２基の構造物を建設していることを航空写真と地図とともに公表しました。
東シナ海のガス田開発を巡っては７年前の２００８年に、日中両政府が共同開発することで合意し、５年前に条約の締結交渉も１度行われたものの、２０１０年に起きた沖縄県の尖閣諸島沖の中国漁船による衝突事件をきっかけに中断したままとなっています。
これについて菅官房長官は２２日の記者会見で、「中断している合意を実施するための交渉を強く求めてきており、東シナ海を、平和・協力・友好の海にすることが両国にとって共通の利益であり、責任でもある」と述べました。
政府は中国の海洋進出の活発化への懸念を国際世論に訴えかけながら、中国に対して中断しているガス田の共同開発の条約締結交渉の再開に応じるよう働きかけを強めることにしています。
東シナ海のガス田開発を巡り、中国が建設している新たな構造物の航空写真などを政府が公表したことについて、２２日夜遅く、中国外務省の陸慷報道官がコメントを発表し、「東シナ海でのガス田開発は、中国の管轄の海域で行っている」と、従来の立場を繰り返しました。
そのうえで、「日本のやり方は故意に対立を作り出すもので、東シナ海情勢をコントロールして両国関係の改善を進めるうえで何の建設的な意義もない」と非難しました。
そして、「東シナ海の問題での原則的な合意の履行を重視する中国の立場に変わりはなく、日本と意思疎通を続けることも望んでいる。肝心なのは日本が合意の履行のためのよい雰囲気と条件を作ることだ。日本がガス田問題で騒ぎ立てることは明らかに両国の対話と協力のためにならない」と主張しました。
日中両政府が合意したガス田の共同開発を実行に移すための条約の締結交渉は、中国側が一方的に中断したままですが、陸報道官のコメントは、その責任を日本に転嫁したかたちになっています。
アメリカ国務省の報道官は２２日、ＮＨＫの取材に対し、「われわれは東シナ海でのエネルギー開発を巡る中国の活動が活発になっていることを認識している」としています。そのうえで、「日中両国の良好な関係は、この地域だけでなく、アメリカの利益でもある。緊張を和らげるために、問題の解決に向けて協力的な態度で対応するよう促す」として、東シナ海でのガス田の共同開発の条約締結交渉が再開され、外交的な解決を目指すことが望ましいという認識を示しました。
菅官房長官 「中国ガス田開発 建設的な対応を」 NHKニュース
政府が２２日、東シナ海でのガス田開発を巡って、中国が２０１３年６月以降、新たに１２基の構造物を建設していることを航空写真などと共に公表したことについて、中国外務省の報道官は「故意に対立を作り出すものだ」などと非難するコメントを発表しました。
これについて、菅官房長官は午前の記者会見で「中国側の指摘は全く当たらない。中国側に対しては一方的な開発行為を中止するよう求めていたし、東シナ海の資源開発に関する日中間の協力で一致した２００８年６月の合意を早急に実施するよう、さまざまな機会を通じて強く求めてきた」と述べました。
そのうえで、菅官房長官は「中国側こそ日本側の呼びかけに応じ、建設的に問題を解決することを期待したい。合意には、平和、協力、友好の海にしようということがあるので、しっかり対応するよう強く求めていきたい」と述べました。
政府は、２２日、中国が、東シナ海でのガス田開発を巡り２０１３年６月以降、新たに１２基の構造物を建設していることを航空写真と地図とともに公表しました。
これを受けて、２３日開かれた自民党の外交関係の合同会議で、防衛省の担当者は、中国側の意図について、「新たな構造物を、ヘリコプターや無人機の離着陸に活用し、警戒監視能力が向上する可能性はある」と指摘し、ガス田の施設を、安全保障目的で利用する可能性もあるという見方を示しました。
これに対し、出席者からは、「日中中間線付近の天然ガスの埋蔵量は限られているとみられるにもかかわらず、新たに１２基もの構造物を建設しているのは、軍事的に利用する意図が明白だ」という批判や、「国際世論にも訴えて、構造物の軍事的な利用を防ぐため、政府は建設の進ちょくや、運用の状況などについて、収集した情報を積極的に公開すべきだ」といった要望が相次ぎました。
