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スエズ運河 拡張工事が完了 通過時間短縮へ NHKニュース

1869年に開通したスエズ運河は、アジア側の紅海とヨーロッパ側の地中海とを結ぶ海上交通の要衝で、全長190キロのうち72キロの区間で運河を拡張する工事が終わり、6日、エジプト政府が記念の式典を開きました。
式典には、日本の薗浦外務政務官が出席したほか、フランスのオランド大統領ら各国の首脳や閣僚が招かれました。
今回の拡張工事によって、スエズ運河は、これまで幅が狭く南北交互の通航だった区間が両側通航となり、船の通過にかかる時間が大幅に短縮され、より多くの船が通れるようになります。工事は当初の3年の計画を1年に短縮して完了し、シシ大統領は「エジプト人が力を尽くし、人類とその繁栄のために贈り物を届けた」と述べ、新しい運河の門出に胸を張りました。
エジプト政府は、8年後の2023年には、1日に通過する船が現在のおよそ2倍に増え、収入も2.5倍に増加すると見込んでおり、経済が低迷するなか、手堅い収入源として期待を寄せています。
世界の海運では、太平洋と大西洋を結ぶパナマ運河も拡張工事を終えて来年4月から運用を始める予定で、今後、航海にかかる日数や運河の料金などを比べながら航路を見直す企業の動きが加速しそうです。

スエズ運河の拡張によって利便性が大きく高まると期待されています。
一方通行の区間がなくなって船の待ち時間が大幅に短縮され、たとえば通過にかかる時間は、地中海から紅海へと抜ける場合、現在の18時間から11時間になるということです。エジプト政府は、通過する船の1日当たりの数が現在の49隻から2023年には97隻に増えると見積もっています。

エジプトは、2011年の民主化運動いわゆる「アラブの春」以降、観光客が激減して観光収入は半分以下にまで落ち込んでいるほか、外国からの投資も鈍ったままです。
経済が低迷するなか、エジプト政府はスエズ運河の通航料を2011年から3年連続で値上げしたり、LNG船向けの割引を減らしたりすることで、運河からは「アラブの春」の前よりも多くの収入を得ています。
おととしの軍による事実上のクーデターによって実権を握ったシシ政権は、去年、当初は3年を予定していた運河の拡張工事を1年で終わらせると宣言し、国内外からしゅんせつを行う企業をかき集めて急ピッチで工事を進めてきました。護岸工事はまだ続いているものの船の通過に問題はないということで、エジプト政府は式典まで1週間余りに迫った先月29日、工事は完了したと発表し、予定どおり商業運用を開始するとしています。
新しい運河には「エジプトから世界への贈り物」というキャッチフレーズがつけられ、シシ政権としては、宣言どおりに工事を終わらせたリーダーシップをアピールすることで、運河周辺の開発に外国からの投資を呼び込むとともに、国内の求心力を高めるねらいがあるものとみられます。

スエズ運河の拡張は、アジアやヨーロッパでサプライチェーンを展開する日本企業にとっては、将来的に工場の立地や仕入れ先で選択肢が増えることになりそうです。
ただ、運河の拡張には85億ドル(日本円で1兆円余り)の予算を投入しており、今後の通航料の値上げが懸念されています。海運会社でつくる「日本船主協会」は先月末、役員らをエジプトに派遣し、ICS=国際海運会議所など関係団体とともに今回の計画の発表以来、初めてスエズ運河庁と協議の場を持ちました。関係団体は1年に1度は協議の場を設けることを提案し、当局も合意したということで、日本船主協会の石川尚常務理事は「運河の通航料をはじめ船でモノを運ぶのにかかる費用は、直接的、間接的に消費者にはねかえってくる。運河庁との定期的な対話を通じて意見を述べ合い、値上げを止めるまではできなくとも、リーズナブルな値上げに近づけていきたい」と話しています。